Sigur Rós
アイスランド出身の、ポスト・ロックを代表するバンドの1つ。
ロックバンドでありながら弦楽器やピアノといった楽器を取り入れ、
アンビエントかつクラシカルな響きを持つ独創的なサウンドを展開している。
Von C
Ágætis byrjun A-
( ) B+
Takk… B+
Með suð í eyrum við spilum endalaust B
Valtari B-
Kveikur C
Von C
[総評]
1997年。シガー・ロスのデビューアルバムで、意味は「希望(Hope)」。
後にポストロックの代名詞的存在として世界的に名が知られるようになるシガー・ロスであるが、
ファーストアルバムは全く注目されず、アイスランドでも300枚程度のセールスに終わった、
シガー・ロスのサウンドの特徴であるアンビエント的な要素や、
弦楽器を多用した美しいサウンドはこのアルバムからも断片的に現れてはいるが、
今作はどちらかといえばノイズロック的、あるいはクラウトロックな印象のある、非常にダークなアルバム。
90年代当時のオルタナティブロックの空気感が随所に伺えるアルバムで、
そういう意味ではシガー・ロスのアルバムの中で最も「ロックっぽい」アルバムと言える。
[ピックアップ]
Dögun
★★★★★★★☆ 7.5
Myrkur
★★★★★★★★ 8
Hafssól
★★★★★★★☆ 7.5
Von
★★★★★★★☆ 7.5
Ágætis byrjun A-
[総評]
1999年。アルバム名の意味は「A Good Beginning」。
シガー・ロスの名を一躍有名にしたアルバムで、後のシガー・ロスサウンドを確立したアルバムでもある。
ボウイング奏法による独創的なギターサウンドに、ストリングスやピアノ、
グロッケンシュピールといったアコースティックな楽器を多用したサウンドが特徴で、
アルバム全編、穏やかなテンポで幻想的な演奏が繰り広げられている。
「ロック」という枠組みで考えると、いわゆる普通のロック的なカラーはかなり薄く、
むしろアンビエントやネオクラシカルといった枠組みに近く、
「イーサリアル・ミュージック」(ethereal)ともカテゴライズされる。
これ以降のアルバムは基本的にこのアルバムの作風を踏襲しており、
原点、ということでクオリティは高い。バンドの最高傑作の1つ。
[ピックアップ]
Svefn-g-englar
★★★★★★★★★ 9
Starálfur
★★★★★★★★☆ 8.5
Flugufrelsarinn
★★★★★★★☆ 7.5
Viðrar vel til loftárása
★★★★★★★☆ 7.5
Olsen Olsen
★★★★★★★★★ 9
Ágætis byrjun
★★★★★★★★ 8
Avalon
★★★★★★★☆ 7.5
( ) B+
[総評]
2002年。
グラミー賞のオルタナティヴミュージック部門にもノミネートされ、世界的な名声を獲得した、
シガー・ロスを代表する1作。
非常に個性的なアルバムタイトルだが、もともとは完全に無題のアルバムタイトルにする予定
(空白記号のみ)だったものの、諸々の事情で「それだけでタイトルにするのは難しい」という事になった為、
便宜上「カッコ」をつけたというのが由来とのこと。
アルバムの全体的な雰囲気は前作を踏襲した幻想的なものになっているが、
アルバム後半の曲には1stアルバムのような実験的なギターサウンドもあり、
1stと2ndの要素を1つにしてコンセプチュアルにまとめたアルバムとなっている。
前作と並んでバンドの最高傑作として評価されるが、
独創性と実験性の両立、「無題」というテーマで統一されたコンセプトという点で、
今作のほうがアルバムとして「スキがない」という印象
(そういう意味で、万人受けしやすいのは前作、とも)。
[ピックアップ]
Untitled 1
★★★★★★★★☆ 8.5
Untitled 2
★★★★★★★☆ 7.5
Untitled 3
★★★★★★★★ 8
Untitled 4
★★★★★★★★☆ 8.5
Untitled 6
★★★★★★★★ 8
Untitled 7
★★★★★★★☆ 7.5
Takk... B+
[総評]
2005年。
作風は「Agaetis byrjun」「( )」の延長線上にあるアルバムだが、幻想的でアンビエント色が強かった2作に比べると、
幻想的でありつつもポップな雰囲気を感じさせる楽曲や、
トイトロニカ的な影響を受けた「可愛らしい」印象のある曲調が含まれているのが特徴。
特にトイトロニカの代表的バンドmum(同じアイスランド出身でもある)の
「Finally We Are No One」や「Summer Make Good」ともサウンドや雰囲気に共通項がある。
一方で2曲目「Glósóli」のように、非常に劇的な展開を持つ楽曲もあり、
バラエティに富んでいるアルバムで、シガー・ロスの中では
しばしば「入門編」的な位置付けとして見なされるアルバムだが、全体的なクオリティは高い。
[ピックアップ]
Glósóli
★★★★★★★★★ 9
Hoppípolla
★★★★★★★★☆ 8.5
Sé lest
★★★★★★★☆ 7.5
Sæglópur
★★★★★★★★ 8
Mílanó
★★★★★★★★ 8
Með suð í eyrum við spilum endalaust B
[総評]
2008年。
前作「Takk...」の路線を継承した、比較的ポップな雰囲気のアルバム。
特に前半部では、
今までのシガーロスのアルバムではあまり見られなかったドラムサウンドを全面に出した「グルーヴ」を持つ楽曲が多く、
特に1曲目の「Gobbledigook」では、
非常に印象的な、民族音楽的グルーヴが取り入れられている。
一方でアルバムの後半はそれまでのシガー・ロスの路線を継承した、
叙情的な作風が展開されているのだが、
このアルバムから作風やサウンドの持つ雰囲気がやや内省的なものへと変化していく
(非常に荘厳なサウンドだったそれまでのアルバムに比べ、
アコースティックギターやピアノ、ストリングスといった
楽器の構成が最小限となっているサウンドが多い)為、
この作品以降と以前で分けられる、バンドの転換点、という印象のあるアルバム。
[ピックアップ]
Gobbledigook
★★★★★★★★☆ 8.5
Inní mér syngur vitleysingur
★★★★★★★★☆ 8.5
Við spilum endalaust
★★★★★★★☆ 7.5
Festival
★★★★★★★☆ 7.5
All Alright
★★★★★★★★ 8
Valtari B-
[総評]
2012年。
前作発表後、バンドの一時的な活動休止や、
ボーカリストであるヨンシーのソロ活動等を経てのアルバム。
前作の前半部や「Takk...」での穏やかなポップ調から回帰して、
「Ágætis byrjun」や「( )」のようなアンビエント色の強いアルバムとなっている。
上記2作はアンビエント調であっても「幸福感のある」とか「天国のような」といった、
比較的ポジティブな文面で形容される事が多いサウンドなのだが、
今作のアンビエントは前作の後半部で見せたやや暗いトーンの、
内省的なアンビエントサウンドが中心となっている。
このアルバム単体で見ると、シガー・ロスならではの美しいサウンドが展開された作品ではあるのだが、
如何せん「Ágætis byrjun」や「( )」と同系統の作風のため、
どうしてもその2作品と比較されがちな、ある意味で惜しいアルバム。
[ピックアップ]
Varúð
★★★★★★★★ 8
Dauðalogn
★★★★★★★☆ 7.5
Valtari
★★★★★★★☆ 7.5
Fjögur píanó
★★★★★★★☆ 7.5
Kveikur C+
[総評]
2013年。
前作で「Ágætis byrjun」や「( )」に回帰したような作風のアルバムを発表していたが、
今作ではさらに回帰し「Von」のような実験的ロック要素のあるサウンドを展開しており、
ギターサウンドを全面に出した楽曲やノイズを含んだサウンドを中心に構成されたアルバム、
という大きな特徴を持つ。
それまでの「幻想的」「叙情的」と評されたサウンドの比重は下がり、
アンビエント要素の薄いアルバムの為、シガー・ロスの作品としては賛否両論あるアルバム。
一方で1stアルバム以来となる「ロックっぽい」アルバムではある為、
シガー・ロスの新境地を開拓したアルバム、
と言えるかもしれない(これ以降オリジナルアルバムの発表は途絶えているが)。
[ピックアップ]
Brennisteinn
★★★★★★★☆ 7.5
Ísjaki
★★★★★★★★ 8
Yfirborð
★★★★★★★☆ 7.5
Stormur
★★★★★★★☆ 7.5
Rafstraumur
★★★★★★★☆ 7.5
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