Massive Attack イギリス・ブリストル出身の音楽グループ。 ヘヴィーでダークながらどこか幻想的なそのサウンドは 「トリップ・ホップ」あるいは出身地を取って「ブリストルサウンド」と呼ばれ、 90年代の音楽シーンに多大な影響を与えた。Blue Lines B Protection B Mezzanine B+ 100th Window B+ Heligoland C Blue Lines B [総評]1991年。この当時、ロンドンやマンチェスターはレイヴシーン全盛期であり、 そのサウンドと対比させる形で(バンドの出身地を取って)「ブリストル・サウンド」と呼ばれ、 レイヴとはまた異なる電子音楽の方向性を生み出した重要作品。 このアルバムのベースはヒップホップ、レゲエ、ダブ、R&B、民族音楽といったジャンルの音楽で、 それらは既にそれぞれ単独でイギリスの音楽シーンで流行しつつあった、あるいは、流行していたサウンドなのだが、 それらの様々なジャンルを、ベースを効かせ、落ち着いたテンポで、 暗い雰囲気を漂わせる曲調に統一してまとめた所にこのグループの独創性がある。 デビュー作でありながら、 このアルバムの作風を踏まえて「トリップ・ホップ」というジャンルが新しく生み出されるほど多大な影響力を誇った。
[ピックアップ] Blue Lines Unfinished Sympathy Daydreaming
Lately Protection B [総評]1994年。サウンドとしては前作「Blue Lines」の延長線上にあり、 (それだけ前作の段階で作風が完成されていたとも言えるが)、全体的なアルバムのトーンは共通している。 前作に比べると、「トリップ・ホップ」と呼称されたことへの反動か、 ヒップホップ的なカラーは薄まっており、比較的R&B的な雰囲気が強いという特徴がある。 様々なジャンルを取り入れ、ある意味で雑多な雰囲気を持っていた前作や、 ギターサウンドを取り入れ、よりダークさ、ヘヴィーさを増した次作に比べると、 良くも悪くも、洗練されてまとまっている、という作りのアルバム。 同年に出たポーティスヘッドのアルバム「Dummy」に近い雰囲気がある。
[ピックアップ] Weather Storm
Heat Miser Mezzanine B+ [総評]1998年。 それまでの重く暗いビートはそのままに、 今までのアルバムでは殆ど見られなかったギターサウンドを随所に取り入れている点が特徴。 結果、トリップホップ風でありながらロック色のあるアルバムとなり、オルタナティブロック的な側面からも評価された、 バンドを代表する1作。 90年代はロック系の音楽と電子音楽系(ダンスミュージック系)の音楽が様々な形で融合した時代でもあり、 特にこの時期は「明るく激しい」系のビッグビート全盛期だったのだが (前年にプロディジーの「Fat of the Land」と、 ケミカル・ブラザーズの「Dig Your Own Hole」が発表されている)、 その対極にある「暗く重い」系の代表作としてしばしば対比的に挙げられるアルバムでもある。
[ピックアップ]
Teardrop
Exchange
Black Milk
Mezzanine
(Exchange) 100th Window B+ [総評]2003年。前作でメンバーの1人だったマッシュルームが脱退。 もう1人のメンバーであるダディGも制作に不参加となり、 加えて、それまでのアルバムでは多数のゲストミュージシャンが参加していたのだが、 今作ではそのゲストの数も大幅に少なくなった結果、 3Dを中心とした、ほぼ単独でのサウンドプロダクションが行われた。 結果(エレクトロニカの流行といった音楽シーンの変化もあってか)、 今までのアルバムに比べると電子音楽的要素が最も強く出たアルバムとなっている。 「暗く重い」作風にブレはないのだが、(特に前作「Mezzanine」と比べると) エレクトロニック的サウンドへのかなり大胆なモデルチェンジが行われており、 そういった点で賛否両論あるアルバム。 アルバムを通して無駄のないエレクトロニカ的トリップホップが展開されており、完成度は高いのだが (個人的にはマッシヴアタックの中で1番好きなアルバム)、 1-3作目のアルバムの持つ名声の影に隠れやすい、やや不遇なアルバム。
[ピックアップ]
What Your Soul Sings
Everywhen
Special Cases
Small Time Shot Away Heligoland C [総評]2010年。前作から7年のブランクを空けてのアルバムで(レコーディング自体は2005年頃から断続的に行われていたとの事)、 前作では制作に不参加だったダディGが復帰している点と、 再び多数のゲストミュージシャンを招いての制作が行われた結果、 前作「100th Window」のような内省的な雰囲気は無くなり、それ以前のアルバムに近い作風へと戻っている。 アルバム全体を通して「暗く重い」マッシブ・アタックの雰囲気は残っているのだが、 インタビューで3Dが「有機的」というキーワードを発言している通り、 それまでのマッシブ・アタックサウンドを形容する際に用いられた「トリップ」感や、 浮遊感のあるダブ的な雰囲気ははこのアルバムではかなり薄まり、 比較的しっかりとしたビートが随所に用いられている。 アルバム全体における統一感はそれまでのアルバムに比べると少なく、多様である反面まとまりに欠けるようなアルバム。 そういう「雑多な雰囲気のある多様さ」という意味では「Blue Lines」に近い、とも言えるかもしれない。
[ピックアップ]
Splitting The Atom
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