□□□

個性的な名前が特徴で、読みは「クチロロ」。 三浦康嗣を中心としたポップユニットで、 渋谷系やヒップホップ、電子音楽を融合した独創的なサウンドを展開している。 2008年にいとうせいこうがメンバーとして加入したことでも話題を呼ぶ。
□□□ B-
ファンファーレ B+
20世紀アブストラクト C
GOLDEN LOVE A-
Tonight C+
Everyday is a Symphony B+
CD B
マンパワー C
JAPANESE COUPLE B-

□□□ B-

[総評]
2004年。□□□のデビューアルバム。 □□□にとって1作目ではあるが、「ポップ」であるという軸は確立されており、 特に今作では「ロックにおけるポップス的要素」を多く取り入れた作風となっている。 渋谷系(特にフリッパーズギターと小沢・小山田ソロ作)の影響を伺わせる、 いわゆる日本におけるロックのポップス要素と、 ハイ・ラマズ周辺の、洋楽的ソフトロック要素を取り入れた耳触りの良いサウンドが特徴。
一方で後のアルバムに比べるとエレクトロポップ的なサウンドや「ドラマ性のある楽曲」的な要素は薄く、 反対にギターサウンドによるロングインストな楽曲やアンビエント曲が収録されており、 2004年当時のポストロックなサウンドの影響も伺わせる。 総じて、□□□のアルバムの中では最も「ロック的」な雰囲気のあるアルバム。

[ピックアップ]
I know inotch
★★★★★★★☆ 7.5

KUCHIRORO POSSE
★★★★★★★☆ 7.5

この世界
★★★★★★★☆ 7.5

our hands
★★★★★★★☆ 7.5


ファンファーレ B+

[総評]
2005年。後のアルバムに繋がる□□□の作風が確立したアルバムで、 「ポップ」という軸となるテーマはそのままに、前作のようなソフトロックに加え、 後のアルバムで更に傾倒していくことになるエレクトロポップやヒップホップを取り入れた、 よりジャンルレスなアルバムに仕上がっている。
全編が歌モノであり、女性ボーカルの起用、実験的な要素を排した楽曲…と、 □□□のアルバムの中では非常に明快で、わかりやすいアルバム。 全体を通して佳曲がソツなくまとまっているが、その中でも、 「Twilight Race」と「朝の光」 の2曲を聞くことで□□□というユニットがどういった音楽性を志向しているかわかる、と言える。 インディーズ作品であるため(1st、3rdアルバムも含めて)サブスクに無い、という点が惜しいところ。

[ピックアップ]
パーティ
★★★★★★★☆ 7.5

渚のシンデレラ
★★★★★★★☆ 7.5

Twilight Race
★★★★★★★★☆ 8.5

朝の光
★★★★★★★★ 8


20世紀アブストラクト C

[総評]
2006年。 1stアルバムを発表する以前の「20世紀中に作られていた未発表音源集」というコンセプトを持ったアルバム。 そのコンセプト通り、展開されるサウンドは楽曲の断片やスケッチ集というべきもので、 前作や前々作のようなポップミュージックとは大きく異るサウンドが特徴。 「アブストラクト」の名の通り、 90年代末のいわゆるアブストラクトヒップホップに影響を受けたアルバムであるのだが、 それらよりも更に「抽象的」なアルバムで、シンセサイザーによるミニマルなフレーズの反復や荒削りなビート、 未完成品を寄せ集めた結果実験的エレクトロニカのようなアルバムになった、といった作品。
ある程度形になっている楽曲はあるものの、アルバム全体の雰囲気は実験的であり断片的であるので、 □□□のアルバムとしてはかなりの異色作。

[ピックアップ]
□パク
★★★★★★★☆ 7.5

soulful one
★★★★★★★☆ 7.5

Summertime
★★★★★★★☆ 7.5

moon
★★★★★★★☆ 7.5

Queen's Bridge
★★★★★★★☆ 7.5


GOLDEN LOVE A-

[総評]
2007年。□□□初のメジャーレーベル(commmons)からのアルバム。 1stや2ndはどちらかといえば「ロック」のジャンルにカテゴライズされる作風 (それでも特有のポップ感はロックとしてはかなり異彩を放ってはいたが)であったが、 今作ではギターサウンドがほぼ一掃され、 シンセやブレイクビーツ、サンプリング中心のサウンドへと転換している。 加えて、後にメンバーとして加入するいとうせいこうやHALCALI、 SUBMARINEといったヒップホップ/ラップ畑からのゲスト参加により、 結果としてヒップホップ色の強いアルバムとなっている。 だが、いわゆるゴリゴリのヒップホップではなく、 あくまでも「ポップミュージック」の枠組みの中でヒップホップを取り入れている、 という点にこのアルバムの特徴がある。
谷村新司「青空」のサンプリングから壮大に幕を開け、ポップな曲が目白押しのアルバム。 □□□の中では「everyday is a symphony」と並ぶ代表作。

[ピックアップ]
GOLDEN LOVE
★★★★★★★★★ 9

GOLDEN KING
★★★★★★★★★ 9

真夏のラストチューン
★★★★★★★☆ 7.5

夏草
★★★★★★★☆ 7.5

Starflight
★★★★★★★☆ 7.5


Tonight C+

[総評]
2008年。ミニアルバム「Snowflake」を挟んでの作品。 このアルバム発表前にベーシストとして村田シゲが加入、一方で初期メンバーだった南波一海が脱退、 というメンバーの変遷を経た結果、メインパーソナリティである三浦康嗣のカラーが強く出たアルバム。 後の□□□サウンドの特徴の一つに「物語性」「演劇的」といった特徴があるが、 2曲目であり表題曲「Tonight」がそういった作品の端緒であり象徴的な1曲。
この「Tonight」のインパクトが大きく、結果的に2曲目でいきなりクライマックス、 といった思い切った構成になっているアルバム。後の曲も佳曲揃いなのだが (むしろこれ以降の曲の方に□□□的サウンド多し)、 それらを吹っ飛ばしてしまうだけの影響力がこの曲にはある (そして好き嫌いがはっきり分かれるタイプの曲でもある)、と言える。

[ピックアップ]
Skywalking
★★★★★★★☆ 7.5

Tonight
★★★★★★★★ 8

ice cold summer madness
★★★★★★★☆ 7.5

AM 2:08
★★★★★★★☆ 7.5


Everyday is a Symphony B+

[総評]
2009年。以前のアルバムでフィーチャリングして交流のあったいとうせいこうが この作品から正式に加入。 サウンドとしては前作、前々作で確立したエレクトロポップなのだが、 このアルバム以降、作品ごとに明確なコンセプトなテーマを掲げ、 それに沿った作品を展開するようになる。 今作は、フィールドレコーディングによる日常音、生活音、 一般の人々のヴォイスサンプリングを軸に構成された 「日々の生活」をテーマにしたアルバム。サンプリングされた『日常』は、 「時報」から「卒業式」まで多岐に渡っており、 このアルバムの持つバラエティ豊かな印象をより強めている。
これ以降の□□□の活動や方向性を決定付けた重要な意味を持つアルバムで、 「00:00:00」「Re:Re:Re:」「ヒップホップの初期衝動」 といった、のちのアルバムで続編や派生作品が作られる代表曲が収録されている。

[ピックアップ]
Good Morning!
★★★★★★★☆ 7.5

Tokyo
★★★★★★★☆ 7.5

ヒップホップの初期衝動
★★★★★★★★☆ 8.5

moonlight lovers
★★★★★★★☆ 7.5

Re: Re: Re:
★★★★★★★★☆ 8.5

00:00:00
★★★★★★★★★ 9


CD B

[総評]
2011年。前作「Everyday is a Symphony」の続編といったアルバムで、 サウンドの根幹であるエレクトロポップと多様なサンプリング、という点が共通した要素。 今作のコンセプトは「女性ボーカル」と「言葉」で、 ただ女性ゲストに歌わせるのではなく、 一度構成されたものを解体して再構築する、 加えて歌詞も言葉遊び的なものにする、 という実験的な手法(しかし出来上がった完成形はかなりポップなものに仕上がっている)が特徴。
電子音とブレイクビーツの融合という要素と、「言葉(歌詞)」を、 意味のある内容にするよりも「音」として使う手法、 といった要素が共通しているという点で、Corneliusの『Sensuous』に近いところがある。

[ピックアップ]
1234
★★★★★★★☆ 7.5

ヒップホップの経年変化
★★★★★★★★ 8

恋はリズムに乗って
★★★★★★★☆ 7.5

あたらしいたましい
★★★★★★★★★ 9

Iuai
★★★★★★★☆ 7.5


マンパワー C

[総評]
2012年。東日本大震災を経てのアルバムで、 アルバム全体を通して3.11への意識、メッセージが強く出た作品。 この作品の制作に至るまでに主宰である三浦が演劇作品への楽曲提供を行い、 そこでの経験をフィードバックした演劇的な要素の強い作品が特徴。 10分超えの大作2曲「合唱曲スカイツリー」「いつかどこかで」 を軸にインタールード的な曲を挟む構成。
「演劇的」な要素と、もともと□□□の作品にはあまり含まれていなかった 「メッセージ性」という要素を全面に出しており、 アルバム全体に漂う特有の雰囲気をどう捉えるかによって評価が変わる、 ある意味、好き嫌いが非常にはっきり分かれるアルバム。 心に刺さる人にとっては大傑作であり、 一方で受け付けないという人がいてもおかしくない、 という非常に振れ幅の広い作品であるともいえる。

[ピックアップ]
聖者の行進
★★★★★★★★★ 9

いつかどこかで(Album ver.)
★★★★★★★★☆ 8.5


JAPANESE COUPLE B-

[総評]
2013年。 「Everyday is a Symphony」以降、 コンセプトやサウンド面でかなり凝ったポップミュージックを手掛けていた□□□だったが、 今作では「ラブソング」というわかりやすいテーマに加え、 ゲスト無しでの全編ボーカル曲で、その楽曲も比較的シンプルな構成のアルバムとなっていて、 □□□の作品の中では初期作の、「□□□」「ファンファーレ」に近い雰囲気を持ったアルバム。
アルバムを代表するような、いわゆるキラーチューンに欠け、 それまでのアルバムのような「作り込み感」やボリュームという点で物足りない面もあるものの、 □□□の持つポップ感覚そのものはこのアルバムでも大きく変わっていない。 良くも悪くもあっさりとしたアルバム (主宰である三浦は「締切に間に合わなかった」ともコメントしている)。

[ピックアップ]
付き合わないか
★★★★★★★☆ 7.5

ex-girlfriend
★★★★★★★★☆ 8.5

ふたりは恋人
★★★★★★★☆ 7.5


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