Kraftwerk

電子音楽史上において極めて重要なバンド。 電子音楽をポップ・ミュージックに持ち込んだ先駆的存在として知られる。 ポップ・ミュージックを語る上で欠かせない偉大なバンドなのだが、 ファンからは何故だか「愛すべき爺様」みたいな扱いを受けている。
Autobahn B-
Radio-Activity B
Trans Europa Express A-
The Man Machine A-
Computer World B
Techno Pop B+
Tour de France Soundtrack B+

Autobahn B-

[総評]
1974年。プログレッシブロックや現代音楽など『実験的』な方法で使われていたシンセサイザーを ポップミュージックに活用、ヒットチャートにランクインしたことから、一般層にシンセサイザー音楽が浸透。 「テクノ史を語る上で最も重要なアルバムの1つ」といった大仰な肩書きで持って語られるアルバム。
やはり「Autobahn」がよい。22分半じっくり聞くのはさすがにしんどいけれども、 通勤通学途中のバス、電車、自転車なんかに乗りながらだと手頃なBGMとなる。 その他の曲はどれも実験的要素を漂わせる、クラウトロックの延長と言った感じの曲が多いが、 「Kometenmelodie 2」はきらびやかなポップサウンドが展開されており異彩を放っている。

[曲採点]
Autobahn
★★★★★★★★ 8

Kometenmelodie 1
★★★★★★ 6

Kometenmelodie 2
★★★★★★★ 7

Mitternacht
★★★★★☆ 5.5

Morgenspaziergang
★★★★★☆ 5.5


Radio-Activity B

[総評]
1975年。まだまだ実験的な要素が見られ、ボコーダーで喋ってるだけとか、ピヨピヨ鳴ってるだけ、 といったラディカルな曲があるため、曲ごとの点数は低めであるが、 アルバム全体を通してみると、シームレスな曲間で連続性を持たせ、そこに「放射能(Radioactivity)」と「ラジオ放送(Radio-Activity)」の ダブルミーニングなコンセプトで軸を持たせた、かなりまとまったアルバムであると言える。
今やすっかり反原発ソングとして有名になった「Radioactivity」であるが、このときはまだダブルミーニング的な洒落を残しており、 「キュリー夫人に発見される」、「音楽にチャンネルを合わせる」といった、2つのRadioavtivityを示す歌詞が残っている。 「Radioactivity」「Radioland」「Airwaves」など、メロディーを持つ曲はどれもポップで聴きやすい。 特に、「Ohm, Sweet Ohm」は、どこか物悲しい、エンディング感を漂わせている名曲。

[曲採点]
Geiger Counter
★★★★★★ 6 

Radioactivity
★★★★★★★★☆ 8.5

Radioland
★★★★★★★★ 8

Airwaves
★★★★★★★ 7

Intermission
★★★★ 4

News
★★★★☆ 4.5

The Voice of Energy
★★★★ 4

Antena
★★★★★★★ 7

Radio Stars
★★★★★☆ 5.5

Uranium
★★★★☆ 4.5

Transistor
★★★★★☆ 5.5

Ohm, Sweet Ohm
★★★★★★★★★ 9


Trans Europa Express A-

[総評]
1977年。それまでの2枚のアルバムにあったクラウトロック的な実験要素はほとんどなくなり、 完全に『シンセポップ』のアルバムとなった。完成度の高さから特に様々な音楽評論家からの評価が高く、 クラフトワーク最高傑作であるとも言われる。
「Europe Endless」「Trans Europa Express」「Franz Schubert」「Endless Endless」の4曲は、 同じようなシーケンスパターンや、似た主題が繰り返される事から、 クラシック的要素という観点からも鑑賞する事ができる。 「The Hall of Mirrors」は寓話的な歌詞が良いし、「Showroom Dummies」はポップな佳曲であるが、 このアルバムは先述の4曲の完成度の高さが全てであるといっても過言ではない。

[曲採点]
Europe Endless
★★★★★★★★☆ 8.5

The Hall of Mirrors
★★★★★★★ 7

Showroom Dummies
★★★★★★☆ 6.5

Trans Europa Express
(Metal On Metal)
(Abzug)
★★★★★★★★☆ 8.5

Franz Schubert
★★★★★★★☆ 7.5

Endless Endless
★★★★★★★☆ 7.5


The Man Machine A-

[総評]
1978年。クラフトワークの象徴というべきアルバム。「The Robots」「The Model」という2つの ヒット曲を持ち、またジャケットや『ロボット』というコンセプトなど、クラフトワークを語る上で欠かせない要素が 詰まっている。
2つのヒット曲や「The Man Machine」はどれも、同じフレーズを繰り返しているだけなのだが、ポップにまとめられており聴きやすい。 「Spacelab」「Metropolis」は、30年以上経った今ではレトロフューチャー的な感覚で聴ける。 「Neon Lights」 はクラフトワークの中でも屈指の美しさを持つ曲であろう。アルバム「Autobahn」の「Kometen melodie 2」 のように、シンセの持つきらびやかなサウンドは夜を表現するのに向いているのだろうか。

[曲採点]
The Robots
★★★★★★★☆ 7.5

Spacelab
★★★★★★★☆ 7.5

Metropolis
★★★★★★★ 7

The Model
★★★★★★★ 7

Neon Lights
★★★★★★★★★ 9

The Man Machine
★★★★★★★☆ 7.5


Computer World B

[総評]
1981年。来るべきコンピューター世界を「予言」していた、といったアオりで知られる。 前作で確立し『ロボット』のイメージを押し進め、『コンピュータ』に進化したサウンドは、 人間くささを取り払った、シーケンサーによる画一なビートが特徴。 後のヒップホップなどに与えた影響は凄まじく、サンプリングの格好のネタとして あらゆるアーティストにフレーズが引用された。
「Pocket Calculator」がきっかけでクラフトワークを知った、という個人的感想。 メロディというよりはシーケンスフレーズの反復、ビートといった方向に主眼が置かれており、 それまでのアルバムに比べると、メロディを聴く、という曲は少ないが、 「Computer Love」は美しいフレーズが奏でられる秀作。

[曲採点]
Computer World
★★★★★★★ 7

Pocket Calculator
★★★★★★★★ 8

Numbers
★★★★★★☆ 6.5

Computer World 2
★★★★★★☆ 6.5

Computer Love
★★★★★★★★★ 9

Home Computer
★★★★★★☆  6.5

It's More Fun To Compute
★★★★★★☆ 6.5


Techno Pop B+

[総評]
1986年。もとは「Electric Cafe」という題名。アート・オブ・ノイズやアフリカ・バンバータに影響を受け、 サンプリングやヒップホップ的ビートなどを取り入れたアルバム前半3曲が特に高い評価を得ている。 が、発売された当時は、ニューウェーブ・テクノポップ全盛期を過ぎ「デトロイト・テクノ」などの新しいテクノサウンドが 生まれつつあり、さらにアルバム内で使用されたデジタルシンセのサウンドがやや陳腐化していたこともあり、 「時代遅れ」などと評され、やや不遇なアルバムだった。
やはり前半3曲の完成度の高さが素晴らしい。音楽の評価でクラフトワークサウンドを引き合いに出されるケースに 「音数を減らしながらも完璧に構築された音楽」といったアオりが使われたりするが、 おそらくそれは特にこの3曲(特に「Musique Non Stop」)での印象から来ているのだろうと思う。 バルトスボーカルの代表曲「The Telephone Call」も良質なポップサウンド。一方、Kraftwerkの蒲田行進曲と誰かが評した「Sex Object」、 冒頭のフレーズがやたらサンプリングされる「Electric Cafe」はややパワー不足か。

[曲採点]
Boing Boom Tschak
★★★★★★★★ 8

Techno Pop
★★★★★★★★ 8

Musique Non Stop
★★★★★★★★★ 9

The Telephone Call
★★★★★★★☆ 7.5

House Phone
★★★★★★★ 7

Sex Object
★★★★★★ 6

Electric Cafe
★★★★★★ 6


Tour De France Soundtracks B+

[総評]
2003年。前作から実に17年というブランクを空け発表されたアルバム。 自転車にハマりにハマったラルフの意向がコンセプトに強く出たアルバムで、 ツール・ド・フランス開催100周年記念として制作された。 さすがに17年もブランクが開いたたためそれまでのアルバムとは音色が大きく異なり、 洗練されたテクノサウンドとなっている。
「Prologue」の静かな高揚感、「Tour De France Etape 2」の疾走感が素晴らしい。 前半5曲は自転車漕ぎながらノンストップで聴くのが最適な鑑賞方法だと思われる。 その他の曲は、主題やシーケンスパターンを延々と繰り返しながらポップにまとめるという、 それまでのアルバムにも見られた特徴が出ているが、音色がより硬質なサウンドに。 「Tour De France」は、1983年に発表されたシングルのリメイク。 原曲になんとなく漂う「ユルさ」がなくなり、本アルバムにマッチしたリメイクとなっている。

[曲採点]
Prologue
★★★★★★★★ 8

Tour De France Etape 1
★★★★★★★☆ 7.5

Tour De France Etape 2
★★★★★★★★☆ 8.5

Tour De France Etape 3
★★★★★★★☆ 7.5

Chrono
★★★★★★☆ 6.5

Vitamin
★★★★★★★ 7

Aero Dinamik
★★★★★★★☆ 7.5

Titanium
★★★★★★★ 7

Elektro Kardiogramm
★★★★★★☆ 6.5

La Forme
★★★★★★★☆ 7.5

Regeneration
★★★★★★☆ 6.5

Tour De France
★★★★★★★★☆ 8.5


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