Ken Ishii

日本テクノシーンにおける重要人物の1人。 デトロイトテクノをサウンドのベースとした独自のサウンドを作り上げている。 「Rez」「ルミネスII」など、しばしば水口哲也プロデュース作品にサウンドクリエイターとして参加している。
Garden on the Palm B-
Jelly Tones B
Metal Blue America C+
Sleeping Madness B
Flatspin C+
Future in Light B
Sunriser A-

Garden on the Palm B-

[総評]
1993年。ケン・イシイのデビューアルバムで、ベルギーのレーベル「R&S」から発表された。 デリック・メイやカール・クレイグ、リッチー・ホウティン等のアーティストから影響を受けたデトロイト・テクノベースのサウンドを特徴としているが、90年代前半におけるテクノシーンの流行の一端を反映するように、IDM的、アンビエント的な要素が強く表れている。 そのため、アルバム全体を通してのトーンは非常に落ち着いたもので、後のケン・イシイ作品に見られる、ハイトーンなシンセサウンドや押しの強いビートを持つ楽曲は少ない。
特に初期のケン・イシイ作品はトレンドフォロワー的な傾向が強いものの、テクノシーンの流行を素直に取り入れつつも独自の色を発揮している。

[ピックアップ]
Garden on the Palm
★★★★★★★★ 8

Prodrome
★★★★★★★☆ 7.5

Qf
★★★★★★★★ 8


Jelly Tones B-

[総評]
1995年。前作と同じく、この当時のテクノシーンの流行を反映した、IDM、アンビエント的な要素を含んだテクノサウンドが特徴。その中にはダブ的なサウンドも含まれており、同じ1995年に発表された石野卓球のアルバム「Dove Loves Dub」とも共通するところがある。 前作と異なる要素として、はっきりとしたビートに乗ったダンサブルな楽曲が目立つようになり、後のアルバムに通ずるサウンドが徐々にではあるが現れてきている。
この時期の「テクノ」というジャンルの要素があらかた詰め込まれており、90年代中期におけるテクノのお手本というべきアルバム。

[ピックアップ]
Extra
★★★★★★★★☆ 8.5

Cocoa Mousee
★★★★★★★☆ 7.5

The Sign
★★★★★★★☆ 7.5


Metal Blue America C+

[総評]
1998年。ケミカル・ブラザーズやプロディジーといったアーティストに影響を受けた、ビッグビート的なサウンドが特徴。それまでのアルバムには全く見られなかった「ボイス」や「ギターサウンド」がそこかしこに取り入れられている。それまでの特徴であったアンビエント的なサウンドはほぼ一掃され、アルバム全体のトーンは非常にハード。
ケン・イシイの作品の中でも特に賛否両論あるアルバムだが、それまでの作風が比較的内省的で静謐、あるいはダウナーと表現されるようなテクノであったのに対し、今作以降、アッパー、あるいはダンサブルと表現されるサウンドに変化した、という点で重要なアルバム。

[ピックアップ]
Metal Blue America
★★★★★★★☆ 7.5

Action Surrealismo
★★★★★★★☆ 7.5

Somewhere There
★★★★★★★☆ 7.5

Rev Splash
★★★★★★★☆ 7.5


Sleeping Madness B

[総評]
1999年。 前作で起こった「ダウナー→アッパー」への大きな作風転換が今作にも影響を及ぼしている。前作での主要なテーマだったビッグビート路線からまた変化し、現在のケン・イシイサウンドを特徴付ける、ハイトーンなシンセによるテクノサウンドが今作でほぼ形作られた。その一方で、DJ Spookyをゲスト・アーティストに迎えた、アブストラクト・ヒップホップ調の曲が含まれているなど、この当時の流行もしっかりと押さえている。
初期の静謐なテクノサウンドからは大きく変化してしまったものの、ケン・イシイサウンドを形作ったアルバムで、中期の代表作。

[ピックアップ]
Misprogrammed Day
★★★★★★★☆ 7.5

Where is the Dusk
★★★★★★★★ 8

Enso
★★★★★★★☆ 7.5

Sleeping Madness
★★★★★★★★ 8


Flatspin C+

[総評]
2000年。 ハイトーンなテクノサウンドが現在のケン・イシイの大きな特徴であるが、初期アルバムから続く特徴の一つとして、デトロイト・テクノベースのミニマルテクノ的な楽曲、というものがある。今作ではそのミニマルテクノの要素を、他アルバムに比べるとより鮮明に発揮しており、また次作「Future in Light」でも継続していく。
ケン・イシイサウンドの典型といった楽曲「Iceblink」で始まり、ミニマルテクノ、浮遊感のあるサウンドと満遍なく収録されたアルバムであるが、他のアルバムに比較するとやや特徴に欠けるという面もある。

[ピックアップ]
Iceblink (Main Mix)
★★★★★★★★ 8

Mirage
★★★★★★★★ 7.5

Frozen Reminiscence
★★★★★★★★ 8


Future in Light B

[総評]
2002年。 「Awakening」のようなハイトーンなダンスサウンドが印象的なアルバム。前半部はそのようなサウンドが並んでいるが、全編がこういったサウンドなわけではなく、アルバム中盤以降はビートの効いたミニマルテクノが並ぶ。それらの楽曲もミニマルテクノにありがちな内省的なものではなく、比較的アッパーなサウンドで、アルバム全体的な印象としてはダンサブルなもので統一されている。
次作「Sunriser」はほぼこのアルバムの続編といった作品なので、今作で(現時点での)ケン・イシイサウンドは完成されたと言ってよい。

[ピックアップ]
Awakening
★★★★★★★★☆ 8.5

Visionary World
★★★★★★★☆ 7.5

Auburnia
★★★★★★★☆ 7.5

Fadeless
★★★★★★★★☆ 8.5

Strobe Enhanced
★★★★★★★☆ 7.5


Sunriser A-

[総評]
2006年。路線としては前作「Future in Light」の流れを汲む、直系の続編といった作品。以前まではアルバム毎に、大なり小なりサウンド面で何がしかの変化があったが、今作では「Future in Light」からのサウンド面における変化はほとんど見られない。その分この路線での完成度が非常に高められている。
前作はミニマルテクノの要素を多分に含んでいたが、今作ではよりメロディアスなテクノサウンドが展開されている。「Sunriser」「Time Flies」など、前作の「Awakening」のような路線の楽曲が目立ち、そのどれもが充分なクオリティを持つ楽曲に仕上がっている。

[ピックアップ]
Sunriser
★★★★★★★★ 8

Let It All Ride
★★★★★★★☆ 7.5

Organised Green
★★★★★★★☆ 7.5

Mars Buggies
★★★★★★★☆ 7.5

Time Flies
★★★★★★★☆ 7.5

Beam Skywards
★★★★★★★☆ 7.5

Cubitos de Hielo
★★★★★★★★ 8


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