808 State
80年代〜90年代にかけてのレイヴ・ムーブメントの中心的存在として活躍した、
イギリス・マンチェスター出身のグループ。
ディスコやテクノ・ポップからダンスミュージックとしての「テクノ」へと移る時期において
重要な役割を果たした。
Newbuild C-
Quadrastate A-
90 B+
Ex:El B-
Gorgeous C
Don Solaris B
Outpost Transmission B
Transmission Suite B+
Newbuild C-
[総評]
1988年。
808ステイト初のアルバム。
いわゆる「アシッド・ハウス」の先駆的なアルバムとして知られ、
80年代のUSテクノ(シカゴ・ハウス、デトロイト・テクノ)を下敷きにしつつ、
アシッド・ハウスを全面に出したサウンドが特徴。
先述したとおりイギリスの音楽シーンにおけるアシッド・ハウスの先駆的存在として評価されており、
後の90年代テクノシーンに大きな影響を与えている
(エイフェックス・ツインはこのアルバムに影響を受けただけでなく、
後に自身のレーベルで今作と次作「Quadrastate」を再発しているほど)。
とはいえ内容はかなりディープなアシッド・ハウスではあるので、
後のアルバムのように一般受けするような作風とは大きく異なった、
かなりマニアックなアルバム。
[ピックアップ]
E Talk
★★★★★★★☆ 7.5
Quadrastate A-
[総評]
1989年。
前作「Newbuild」と今作はもともとインディーズレーベルで発売されていたもので、
当時は一部にしか注目されていないアルバムだったのだが、
前作はアシッド・ハウス界隈に多大な影響を与え、
今作はテクノ・レイヴシーンに多大な影響を与えた重要な作品。
作品全体を通してデトロイト・テクノの影響を感じさせる非常にクールなアルバム。
代表曲「Pacific」に対して付けられた『デトロイト・テクノに対するイギリスからの回答』
という秀逸なキャッチコピーがそのままこのアルバムを表している。
インディーズの、しかもEPという事で808ステイト作品の中では注目度が低く、
次作「90」の前フリ、みたいな扱いではあるが、アルバムのクオリティは高く傑作。
[ピックアップ]
Pacific State
★★★★★★★★★☆ 9.5
State Ritual
★★★★★★★★☆ 8.5
Disco State
★★★★★★★★ 8
Fire cracker
★★★★★★★★ 8
State to State
★★★★★★★★ 8
90 B+
[総評]
1989年。808ステイトにとって初のメジャーレーベル(ZTT)でのアルバム。
アメリカで発売の際は収録曲に変更を加えた上で「Utd. State 90」として発表された。
808ステイトの代表的アルバムであり、その名を世界に知らしめた作品で、
90年代に流行するレイヴサウンドの原型でありベースとなったアルバム。
このアルバムが与えた影響は非常に大きく、
特に90年代前半のメインストリームにあったダンスミュージックは、
ほぼこのアルバムの影響下にあると言っても過言ではない。
アルバムの完成度としては個人的には「Quadrastate」の方が高いとは思うが、
世界的な影響を与えたという点で808ステイトの中で最も重要なアルバムと言える。
特に「Pacific 202」はテクノ史にも記録されうる重要な1曲。
[ピックアップ]
Ancodia
★★★★★★★☆ 7.5
Cobra Bora
★★★★★★★★ 8
Pacific 202
★★★★★★★★★☆ 9.5
Donkey Doctor
★★★★★★★☆ 7.5
Ex:El B-
[総評]
1991年。
レイヴ・ムーヴメント全盛期の中発表されたアルバムで、
当時の808ステイトの勢いを象徴するかのように、
ニュー・オーダーのバーナード・サムナー、
ソロデビュー前のビョークといった名高いゲストを迎え制作された。
アルバム全体のトーンもレイヴサウンドの影響を色濃く受けたものになっている一方、
前作までのアシッドハウス色やデトロイト・テクノ色は薄れ、
ヨーロッパ的(特にイギリス解釈のテクノ)なサウンドが特徴。
「In Yer Face」「Cubik」がシングルカットされ、
セールスという面では808ステイトの中で最も高い結果を残した。
ただ一方でこのアルバムから実験性、先駆性はやや薄れていき、
シーンの中で埋没・低迷していってしまう。
[ピックアップ]
Nephatiti
★★★★★★★☆ 7.5
Lift
★★★★★★★★☆ 8.5
Cubik
★★★★★★★★ 8
Olympic
★★★★★★★★☆ 8.5
Gorgeous C
[総評]
1993年。レイヴ・ムーヴメントを牽引していた808ステイトであったが、
シーンの沈静化と電子音楽の派生の波に合わせて音楽性をやや変化させており、
それまでのレイヴサウンドだけに留まらず、
ハードコア、テックハウス、ブレイクビーツ、ダブ等々、
この時期に生まれ始めた新たなサウンドを取り入れている。
…のだが、いわゆる「808ステイトらしさ」が薄く、
良く言えば多様な音楽性を包括したアルバムだが、
悪く言えばややまとまりに欠けるアルバム。
このアルバムに至るまでに、メンバーの脱退や、
各自のソロ活動等の影響もありグループとしての活動が低調だった、という点も含めて、
808ステイト低迷期を象徴する作品。
[ピックアップ]
10 X 10
★★★★★★★☆ 7.5
Europa
★★★★★★★☆ 7.5
Black Morpheus
★★★★★★★☆ 7.5
Don Solaris B
[総評]
1996年。前作から3年のブランクを空けてのアルバムで、
その間に主流の電子音楽はレイヴサウンドから、
よりハードかつロック寄りなビッグ・ビート系サウンドと、
ヒップホップやレゲエから派生した
トリップ・ホップやドラムンベースといったジャンルが席巻するようになっており、
そんな中で808ステイトは「一昔前」の電子音楽グループと見なされ、
この作品のセールスも低調な結果に終わってしまっている。
一方このアルバムで展開されるサウンドはそこまで悪くなく、
先述した新しいムーヴメントを取り入れつつも、
「90」期を彷彿とさせる作りに仕上がっており、原点回帰したような、
808ステイトらしいアルバムに仕上がっている。
評価の低さとのギャップも含めて、不遇なアルバム。
[ピックアップ]
Azura
★★★★★★★★ 8
Joyrider
★★★★★★★★ 8
Kohoutek
★★★★★★★★ 8
Mooz
★★★★★★★☆ 7.5
Outpost Transmission B
[総評]
2002年。前作から6年ぶりのアルバム。
「Don Solaris」以降、ベストアルバム「808:88:98」の発表や、
ビデオクリップ集「Opti buk」を発表するなど、散発的には活動していたものの、
基本的には沈黙していた808ステイトだったが、
それまで所属していたZTTレーベルを離れて発表されたアルバム。
2002年当時の電子音楽界隈はエレクトロニカ全盛だったのだが、
そんな中であえて90年代初頭のワープ・レコーズ周辺を彷彿とさせる、
IDM的テクノサウンドを展開している。
それまでの808ステイトは色々と方向性を変えつつも
「レイヴ系サウンド」という軸があったのだが、
今作ではその要素をかなり減らし、IDM的な暗いトーンが中心となったサウンドになっている為、
それまでのアルバムとは大きく印象が異なっている。
[ピックアップ]
Lemonsoul
★★★★★★★☆ 7.5
Suntower
★★★★★★★☆ 7.5
Bent
★★★★★★★☆ 7.5
Souflex
★★★★★★★★☆ 8.5
Transmission Suite B+
[総評]
2019年。前作「Outpost Transmission」以来となる、
17年ぶりのアルバム。
サウンドとしては前作に近く、生楽器やサンプリングをほとんど廃し、
ほぼシンセサイザーのみで構成された90年代のIDM的テクノが中心となっているが、
もう1つの特徴として、デビュー当時を彷彿とさせるアシッド・ハウス色が強く、
かつ(意図的になのかどうか不明だが)ダンスミュージック色をかなり薄めており、
前作以上にダークなトーンとなっているアルバム。
2019年になってもあえて90年代テクノをほぼそのままやっているという辺り、
「テクノの新古典主義」的なアルバム。テクノ界の大御所による、
10年代以降の、過剰化・複雑化している(ように思う)電子音楽に一石を投じるようなアルバム、
と言えるかもしれない(懐古主義とも言えるが)。
[ピックアップ]
Skylon
★★★★★★★☆ 7.5
Huronic
★★★★★★★★ 8
Trinity
★★★★★★★★☆ 8.5
Bent
★★★★★★★☆ 7.5
Souflex
★★★★★★★★☆ 8.5
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