誰もが光の柱があった場所に注目していた。確かになくなっていた。 その代わり、人が一人いた。間違いなくイノショウだった。 イノショウはゆっくりと目を覚まし、自分を確認するかのように言い始める。 「私はイノショウ。また復活する日が来るとはな・・・」 すかさず、秋無とクロが接触を試みる。 「あの、あなたは賢者の一人、イノショウ様ですよね? どうか我々ドクタースリーフ国側に協力してくれませんか?もちろん、ただでとは言いません。 あなたが愛用していた筆の在処をお教えいたします。」 イノショウはクロと秋無をじっと見つめると、静かに言った。 「ほう。筆の在処は、私にも見当がつかないし、お前らの要求をのもうじゃないか。」 クロと秋無は心の中で大きく喜んだ。 「では、まずはあそこにいる邪魔な奴らを一緒に退治してくれませんか? あいつらは、あなた様の命を奪おうとさえしたのです。とりあえず、これを代用の武器としてお使いください。」 というと、クロは筆を1つ取り出した。かなり強力な筆で、弱者には使い切れないだろうが、賢者には箸のようなものだ。 「助かる。では、私の力を見せてやるとするか!」 そういうと、いきなり筆を使い、絵を描いた。 すると、地面が激しく揺らいだ。イノショウは地の力を持っているようだ。 「見たか!私のアースクエイクを!」 「ワア、コレデハ戦エナイ!」 エレクトロが叫ぶ。 他の者も立っているのがやっとで、転んでしまう者もいた。 そこへすかさず秋無のモンスターが飛んでくる。 「うおおおおおおお!!」 かろうじて立っていたブレードが、思いっきり剣を振るう。 モンスターは真っ二つに割れたが、割れたところで爆発し、ブレードは軽い火傷を負った。 「ブレード大丈夫か!?」 ローリーが立ちながら問いかける。 しかし、いきなりローリーの目の前にイノショウが現れた。 「フハハハハ」 そこへすかさずやまりっくが槍を持って襲いかかる。 「くらえ!シマリングライトニング!」 ものすごい雷玉がほとばしり、イノショウに直撃した。 だが・・・イノショウは無傷だ。 「そんな・・・」 「わからないか?私は地の力を持っている。お前のちょこざいな電撃など痛くもかゆくもないわ!」 「ナラ、コレハドウダ!フロスティスピア!」 今度はエレクトロが氷の矢をイノショウにぶつける。 氷属性なので、効果はあった。 「ぐ・・・貴様・・・」 しかし、エレクトロが攻撃した一瞬の隙に、クロから火炎弾を投げ込まれた。 かろうじてかすっただけに済んだが、氷属性のエレクトロにはそれでもかなりの痛手になる。 「オラオラオラオラ!」 工作員が隙をついてクロの腕めがけてパンチを繰り出す。 見事に直撃し、クロの右手はしばらく動かなくなった。 ブレードと秋無はしばらくの間対峙しており、1歩も動かなかった。 が、先に仕掛けたのは秋無だった。絵がモンスターとなりブレードに向かっていく。 ・・・が、モンスターは明後日の方向へ飛んでいった。 「とんだノーコンだな。」 そう言うと、ブレードが秋無にくらいかかった。 秋無はもう1体のモンスターを出し、応戦した。 「うおおおおおおお!」 ブレードはそれを剣で真っ二つにした。爆発により多少ひるんだが、今度は火傷はしなかった。 そこへ後ろからさっきの1体目のモンスターが飛んできた。不意をつかれたブレードに、見事に直撃した。 「グハァ」 「油断したね、ブレード。」 そういうと、秋無はまた絵を描き始めた。とどめを刺すつもりだ。 不意に、秋無は頭にすごい衝撃を感じ、そのまま意識を失ってしまった。 「お前も油断したな。」 万年筆を持ったローリーが、秋無の元へ向かっていく。彼はどうやら漢を呼び出したようだ。 「助かったよ、ローリー。」 ダメージを受けたブレードが、なんとか起きあがりつつ言った。 「ここで待ってろ。俺も賢者を攻撃しに行く。」 そう言うと、ローリーはイノショウの方へと向かった。 「アクアブルー!」 「漢召喚!」 「合体!ブルーファルコン!」 華炎はいろいろな属性の絵を描くことができ、今回はイノショウの地属性の弱点とされる水を描き出した。 それにローリーが描いた漢が、ハルの能力により合成される。 ブルーファルコンはイノショウに向かっていった。 「まだまだだ!」 イノショウはなんとか防いだが、あまりの威力に筆を弾かれてしまった。 弾かれた筆が、神風の方へ飛び、不意に神風がキャッチしてしまった。 「!!神風!」 やまりっくが気づいた頃にはイノショウがものすごいスピードで神風の方に向かっていた。 「女、筆を返してもらうぞ。」 イノショウが力をため、格闘技を繰り出そうとする。神風は恐怖のあまり動くことさえできない。 反射的に目をつぶった神風だが、いつまでたっても痛みを感じない。 「・・・大丈夫か・・・神風」 そこには腹にイノショウの蹴りが直撃し、うずくまっているやまりっくがいた。 競技場で見せた自慢の足で、賢者にかろうじて追い付いていたのだ。 「やまりっく!」 神風がやまりっくの方へ飛びつく。筆を落としたことなどは気にもとめなかった。 「邪魔しやがって・・・まずはお前らから消してやる!レイジンググラウンド!」 筆を拾ったイノショウが怒りをこめて1発繰り出した もうだめだ!そう思っていた神風であるが、不意に体を捕まれ投げ飛ばされた。 やまりっくが渾身の力で神風をエレクトロ向けて投げ出したのだ。 エレクトロは神風をなんとかキャッチした。すかさずやまりっくの方へ目を向ける やまりっくの元では激しい大地の隆起が起こり、やまりっくは投げ飛ばされた。 神風が慌ててやまりっくが飛ばされたところへと走り出す。 やまりっくの様態はかなり悲惨だった。 「嘘でしょ・・・やまりっく・・・ねぇ・・・」 神風はその場に座り込み泣いてしまった。 すると、神風の体が光りだし、しばらくすると竜へと姿を変えた。 「マサカ?神風カ?」 エレクトロはもちろん、場にいる誰もが神風であった竜に注目していた。 「グオオオオオーン」 神風は、イノショウを睨み付けると、口から風を吹いた。 その風はたちまち竜巻となり、イノショウを襲う。 イノショウは避けようとするが、竜巻があまりに大きかったため、結局巻き込まれてしまった。 竜巻がイノショウをはるか遠くへ飛ばしてしまった。 攻撃を終えると、神風は人間に戻っていった。 何があったかわからず、困惑していた。 「あれ?私一体・・・」 エレクトロが言う。 「ソンナ事ヨリモ、今はやまりっくダ!」 神風がはっとする。 「そうだ!やまりっく!早く治療しないと・・・」 そこへ紅桜と民勲が到着した。 「大丈夫か?」 「あ、あなた方は・・・お願い!やまりっくを助けて!」 そう言われると、二人はやまりっくの方を向いた。 「これは酷い・・・今すぐ応急手当をするぞ!」 民勲が医療道具を取り出すと、応急手当を始めた。 「俺たちが乗ってきたヘリがある。それでアヤルバムスまで運んでいこう。」 「ありがとうございます。」 「君たちも一緒に乗っていくといい。」 紅桜がヘリの話をしている間に、民勲が応急手当を終えていた。 「よし、とりあえず応急手当をしておいた。じゃあ、ヘリまで急ぐぞ。」 「ローリーさんたちもありがとうございました。」 「こちらこそ。じゃあ、やまりっくを頼んだよ。」 「マカセテオケ。お前達はどうするのだ?」 「歩いて帰るかな・・・」 「乗せていってやるか?」 華炎が言った。 「良いのか?」 「工作員のお友達だから、放っておくわけにはいかないだろ。」 「助すかります。」 ハルも礼を言った。 「放っておくと言えば、あいつらはどうする?」 華炎はクロと秋無の方を向いた。 「確かに放っておくわけにはいかないな。俺たちが連れて行くよ。」 民勲がそういったが。 「あなたたにに助けてもらうつもりはありませんよ。」 そういうと、クロは秋無を抱えて去ってしまった。 「あっ・・・」 「仕方がない。俺たちだけで帰るぞ。」 それぞれ戻っていった。 その後クロは秋無を起こし、下山していった。 すると彼らを呼びに来た兵士と出会った。 「あっ、クロ様、秋無様。これは一体?」 「イノショウに彼の筆をタネに交渉を持ちかけ、何とか味方に引き込めましたが、相手が多すぎたため、私たちは負けてしまいました。 イノショウは遠くに飛ばされてしましたが、自分の筆を欲しがっていましたから、いずれ我が国にやってくると思います。 それで、あなたはどうしました?」 「それが、城に賢者のトカゲが侵入してきまして、国王にすぐあなた方を呼び戻すよう言われたんです。 赤黒の騎士団も不在で、国王の命が危ないのです。今すぐお戻りください。」 「国王が!?今すぐもどらないと!」 3人は国へと戻っていった。 _________________________________________ いにしえとDr.Fの戦闘は長い間続いていた。 お互い一歩も譲らず、二人ともダメージらしいダメージは受けていない。 またいにしえが絵を描くと、大量の黒い火炎弾がDr.Fの方へと向かう。 Dr.Fが絵を描き、それに対抗するが、数が多すぎたため、いくつか直撃してしまった。 「ほう・・・前とは比べものにならないほど強くなってるな。これも賢者様のおかげかい?」 「だったら何だ?」 「自分の力だけで復讐しないなんて、恥ずかしくないのかな。と思っただけだが。」 「何とでも言え。賢者の力で、俺はこんな事もできるんだ。くらえ!ブラックホール!」」 いにしえが絵ブラックホールの絵を描くと、絵に吸い込まれるような風が吹いた。 トカゲは剣を床に刺しそれにつかまったが、 Dr.Fにはつかむ物がないため、見る見るうちにブラックホールへと引き寄せられていた。 「グッ・・・」 Dr.Fは、吸い込まれる直前になんとか絵を描き、ブラックホールを破壊した。 だが、その反動でダメージを負い、床に倒れてしまった。 「今だ!いにしえ、とどめを刺せ!」 「覚悟しろ!」 いにしえは最後の一筆を入れようとしたが、いにしえの手は何故か動かなかった。 「どうしたの?早くしないと・・・」 トカゲも少し驚いていた。 「私には人を殺すなんてできない・・・」 なんとこの状況でもう1つの人格が出てしまったのだ。 いにしえはその場に座り込んでしまった。 その隙にDr.Fが形成を立て直した。 「どうした?こないならこっちから行くぞ!」 「あ〜、もう!」 トカゲは危険を感じいにしえを担ぎ上げ、窓から脱出した。 「ふ、愚かな。」 Dr.Fは窓を見つめながら呟いた。 しばらくするとさっきの3人が戻ってきた。 「王様!ご無事ですか?」 秋無が心配そうに尋ねる。 「心配ない。それより、そっちはどうだった?」 「は、ご報告します。我々は賢者イノショウに交渉を持ちかけ、なんとか味方に引き込めましたが、 敵勢力にやられ、イノショウはどこかへ吹き飛ばされてしまいました。 しかし、イノショウが交渉内容である筆の在処をかなり知りたがっていたようなので、いずれこの国にやってくると思います。 あ、筆の在処はアヤルバムスです。」 「そうか、よくやった。 イノショウがやって来たら、すぐに赤黒の騎士団も率いてアヤルバムスを攻める。 それまで、お前らは体を休めるといいだろう。」 秋無とクロはDr.Fに一礼すると、戻っていった。 トカゲといにしえは城から少し離れたところで落ち着いた。 いにしえは元の人格に戻ると、はっとして辺りを見渡した。 「おい、何があった?」 「いにしえのもう一人の人格が現れて、結局いにしえは王様を殺せなかった。 その隙に、王様が君に攻撃を仕掛けようとしたから逃げてきたんだよ。」 いにしえはショックを隠しきれなかった。 「何?もう一人の人格だと?馬鹿な・・・ ・・・そうか、もうどうでもよくなってきたな。」 「もう殺さなくて良いの?」 「ああ。」 「じゃあ、これからどうするの?」 「わからん。生きる理由も死ぬ理由もないが、とにかく疲れた。 気ままな放浪の旅でもするさ。」 「そうかぁ。じゃあ、気をつけてね。」 「ああ、じゃあこれも返す。短い間だが、世話になったな。」 いにしえはトカゲに魔石を渡すと、そのまま走り去ってしまった。 「じゃあ、俺も自分の目的を果たそうかな。」 トカゲは剣に魔石を入れながら呟いた。 ___________________________________ イノショウは神風の竜巻で、ザリードの森へ飛ばされていた。 「おのれ・・・今に見てろ・・・」 そういうと、ドクタースリーフ王国へ向けて歩き出した。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 【あとがきのようなもの】 初の大規模な戦闘シーンでしたが、設定不足が意外と目立ち、なかなか展開を決められませんでした。 そのため、強引に展開を進めたり、他にもいろいろ勝手に決めてしまったところもありました。 属性の相性は、ポケモンを参考にしています。 なんかイノショウが賢者なのにやられほうだいですが、筆を取り戻したら最強になるはずです(ぇ それにしても、全キャラ活用するために必死なのが丸見えだなぁ(何)