ゾーラ2とルイージの孫を帰したあと、さんたろうは紅桜と民勲を王の間へ呼んだ。 「紅桜、民勲。もしかしたら君たちの軍を使うときが来るかもしれない。 いつでも出動できるように、しっかりと準備をしてくれ。」 「はい。わかりました。」 二人とも頷いた。 「それと、君たち二人であの光の柱まで行ってくれないか? 先ほどやまりっくたちも向かったが、すごく嫌な予感がしてたまらない。 もし彼らがピンチになったときは、助けて欲しい。」 「はい、おまかせください!」 二人はそう言うと、王の間をあとにした。 「やまりっくか、懐かしいな。今度戦うときは必ず俺が勝つぜ。」 紅桜は以前の大会で負けたときのことを思い出していた。 「おい、紅桜。今はそんなことを言っている場合じゃない。」 こちらは民勲。紅桜より1つ年上であり、常に冷静である。 二人は小さいときから親友であるが、大抵民勲がけんかっ早い紅桜をなだめていた。 「わかっているよ。とりあえず、軍のみんなにいつでも出動できるよう呼びかけ次第、光の柱へ向かう。」 「軍を使うくらい、今は危険な状況なんだ。それをしっかりわきまえておけ。」 軍はほとんど国の治安維持に使われており、犯罪者確保や人命救助などを主にやっていた このように戦争で使われるのは非常にまれである。 「それくらい俺でもわかるよ。んじゃ、急ぐぞ。」 二人は軍隊に呼びかけを行うと、光の柱へと急いだ。 _________________________________________________ 始めに光の柱へ着いたのは、シクッスの3人だった。 「ハル、ローリー・・・こいつは・・・」 光の柱の中には、人影が1つあった。 「おそらく、いやこいつは確実に賢者の一人、イノショウだ。 こんな事になるとは・・・」 ローリーは震えながら答える。 「これはヤバイですよ・・・どうします?」 ハルも相当震えている。 「下手に刺激して目覚めさせるわけにもいかないしな・・・」 幸いなことに、イノショウはまだ目覚めていない。 イノショウが復活することへの恐怖に耐えながら、3人はどうするかを考えていた。 また、華炎と工作員それにあいつもヘリから降り、光の柱を目指して山を登っていた。 「もう少しで着くな。」 「ローリーがいたらどうするつもりだ?」 「ローリーなんて俺には関係ない。」 「へぇ。そうですか。」 華炎は少しにやけた。 ローリーは空に妙な物を見つけた。 「おい、向こうの空を見てみろ。何かが近づいてくる。」 「あれは・・・魔法のじゅうたんですね。」 「魔法のじゅうたんだと?チッ、やまりっくか。」 ブレードが不愉快そうな顔をして言った。 「おい、ブレード。変なことはするなよ。」 ローリーがなだめるように言う。 「わかってる。確かにあいつは死ぬほど気に食わないが、別に悪い奴ではないはずだ。」 元々周囲の人間が二人を比べるから敵対心が生まれただけなので、ブレードもやまりっくを根っから恨んでいるわけではない。 そうこうしている間に、やまりっくたちが到着した。 じゅうたんから降りると、やまりっくはローリーたちがいるのを発見した。 「あ、ローリー。お前達も来ていたのか。」 「ああ。どうやらまずいことになったな。幸い、まだイノショウは眠っている。」 やまりっくはイノショウが眠っている光の柱に目を向けた。 「そうだ!トカゲはどうした?」 「最初に復活した賢者ですか?こちらには来ていませんよ。」 ハルが答えた。 改めてやまりっくも言う。 「イノショウの筆は俺たちの手中にある。だが、そのことはトカゲも知っている。 いずれトカゲとイノショウは接触するだろう。そのときに、当然筆のこともイノショウにばれてしまう。 あの筆がイノショウの手に渡れば、とんでもないことになるのは容易に想像できる。 だが、今はまだイノショウはまともな武器も持ってないし、封印が解けたばかりでは力も満足に出せないだろう。 そう、イノショウを倒すチャンスは今しかないんだ。だから、力を貸してくれ。」 ローリーとハルはブレードに目を向けた。 彼ら自身は別に問題ないが、ブレードが素直に力を貸してくれるかどうかが普段だったようだ。 視線を感じると、ブレードは慌てて言った。 「おい、大陸の危機だってのに個人的な因縁なんて気にしている場合じゃないだろ。 今回だけは特別に力を貸すぜ、やまりっく。」 「ありがとう。」 やまりっくは心から感謝した。 「神風、エレクトロ。君たちも攻撃の準備をしてくれ。一斉攻撃を仕掛ける。」 二人は頷くと、準備を始めた。 「それは困りますね。」 突然6人以外の声がした。 振り返ると、クロと秋無がいた。 「私たちはDr.F王にイノショウを味方につけるように言われているんです。 邪魔するようなら容赦はしませんよ。」 クロが言った。 やまりっくが慌てて言い返す 「ま、待て!何を考えている!? 賢者がお前達なんかに協力するはずがない!」 クロが微かに笑った。 「イノショウの筆がアヤルバムスにあるんだって?さっきの話聞いてましたよ。 その情報を提供すれば、どうなるでしょうかね?」 迂闊だった。やまりっくはそう思った。 ブレードも何かを訴えるかのように秋無を見つめていた。彼らは以前から交流があったらしい。 視線に秋無が気づくと、自らに諭すように言った。 「ごめん、ブレード。俺にはもう何がなんだかわからなくなった。 だからもう、王の命令だけに従うことにしたんだ。」 「秋無・・・」 「王には容赦はするなと言われている・・・だから・・・容赦はしない!」 急に秋無が攻撃を仕掛けてきた。 絵からモンスターが現れ、ブレードに向かって一直線に向かう。 不意を付かれたが、剣を抜きブレードは戦闘態勢に突入した。 しかし、モンスターの気まぐれか、攻撃が逸れ・・・その先にはローリーが。 ローリーは不意を付かれて何もできなかった。 「(ああ・・・俺は死ぬのか・・・最後にあいつに会いたかったな・・・)」 モンスターがローリーに突撃した。そして爆発と共に爆風も巻き上がる。 「ローリー・・・ちくしょう・・・」 「俺が迂闊だったばっかりに・・・」 「ローリーさん・・・いい人だったのに・・・」 「何でローリーさんが死ぬ必要があったんですか!?・・・」 彼と親しかった誰もが嘆いていた。 「俺は・・・間違ってなんかいないんだ・・・」 一方、秋無には人を殺すことの重さがのしかかっていた。 爆風が少しずつ晴れると、なんと人影が2つあった。 爆発に巻き込まれたのはローリーだけのはずである。 「(?・・・・!)」 ローリーははっとした。生きていたのだ。 そしてふと前を見ると、忘れもしない、旧友の姿がそこにはあった。 「まさか・・・工作員なのか・・・」 「ああ、紛れもなく俺だ。また会えたな。」 華炎が割り込む。 「工作員、感動の再開はあとにしておけ。今はそんな状況じゃないだろ。 それにしても、何やら戦いが始まるようだな。工作員はどうせそいつ側に着くんだろ? 俺の目的はお前とローリーの関係を確かめるだけだったし、工作員側につくことにするよ。おい、お前もそれでいいだろ?」 華炎があいつに聞いた。あいつはただ頷いた。 そのとき、神風が異変に気づいた。 「光の柱が無くなってる!」  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 一方、ドクタースリーフ王国ではトカゲといにしえが準備をしていた。 「あ、誰か復活した。イノショウかな?」 『会いに行くのか?』 いにしえはとりあえず聞いてみたが、実際「行く」なんて言われたら身も蓋もない。 「ううん。別に後でいいや。さっさとこっちの用事を済ませちゃいたいからね。」 いにしえは少しホッとした。 『どうやって倒しに行くんだ?』 「兵をなぎ払いつつ、まっすぐ王室まで行くよ。せっかく王を見つけても、兵が邪魔したら話にならないからね。」 『そんな方法で大丈夫なのか?』 「もちろん。そのために俺が協力してるんだよ。あ、それから兵士を無駄に殺さないでね。 俺も無駄に人を殺したくないし。だから、当然王様を殺すのもいにしえだよ。」 『わかった。賢者のくせに、意外と甘いな。』 「俺もまだ若いしね。じゃあ、行こうか。」 二人は城へと向かっていった。 城門は閉ざされていた。門番はいないようだ。 「あ〜、さすがにこの状況じゃ、城の閉鎖は仕方ないよなぁ。」 『どうする?』 「壊しちゃえば良いだけだよ。頑丈そうだけど、俺なら簡単に壊せるし。 それより、城門を壊したらもう後戻りはできないよ。覚悟は良い?」 『ああ、別に死んでも惜しくない命だ』 「よし、じゃあ行くよ!アクアティックブラスト!」 トカゲの剣から水柱がほとばしり、城門はあっけなく壊れた。 「あ、そうだ。いにしえの力だけじゃ不安だから、この魔石を貸してあげる。」 と言うと、トカゲは剣から魔石を取り出し、いにしえに手渡した。 「いいのか?」 魔石のおかげで、いにしえは喋れるようになったが、いきなりの申し出に戸惑った。 「別に良いよ。終わったらすぐに帰してもらうけど。」 「わかった。ありがたく使わせてもらう。」 城内はたちまち混乱に見舞われた。 「何事だ!?」 Dr.F王の『闇』も、予想だにしない状況にかなり慌てていた。 「急に城門からものすごい水柱が・・・城門は完全に壊れました!」 「まさか賢者が・・・おい、今すぐ秋無とクロを呼び戻せ! それと、赤黒の騎士団はどうした!?」 「赤黒の騎士団は、ただいま訓練場にいまして、城内には僅かな兵しか残っていません! 賢者が攻めてくる理由はないと、たかをくくっていたのが裏目に出てしまいました。」 「そうか・・・わかった。では、秋無とクロを呼び戻しにいってくれ!」 「わかりました!すぐに参ります!」 兵は裏口を使い、秋無とクロの元へと急いだ。 「秋瀬胡桃、お前は隠れていろ。奴らの狙いは間違いなく私だ。」 秋瀬胡桃、はDr.Fの『光』を感じた。自分を心配してくれるのは、間違いなく『光』だ。 「私も一緒に戦います!」 「ダメだ!私はお前を失いたくない!どうかわかってくれ・・・」 秋瀬胡桃、はもしもの時は一緒に死ぬ決心もしたつもりだったが、Dr.Fの決意の方に従った。 「わかりました・・・必ず生きて帰ってください。」 「わかってくれてありがとう・・・」 秋瀬胡桃、を見送ると、Dr.Fは『闇』へと戻っていた。 「(賢者とはいえ、無意味に城に攻めてくるとは考えにくいな・・・するともしや・・・)」 「あ〜もう、邪魔だなぁ。」 トカゲといにしえは兵士を倒しつつ確実に王室に近づいていた。 とは言っても、いにしえはただ付いていくだけで、兵士は全てトカゲが倒していた。 剣を一振りすると、炎、水、雷、風など、おかまいなしに兵士に向かっていく。 兵士たちは重傷を負ったり、軽傷で済んだものもいるが、攻撃を受けた物はとても戦える状態ではない。 しかし、トカゲの言ったとおり、死者は一人も出ていない。 「どうやら、この階段の上が王室のあるフロアらしいよ。」 いにしえは黙って頷いた。 二人は階段を上っていった。 王室の前では、たくさんの兵士が密集しており、その中にはひものもいた。 クロと秋無が出ており、Dr.Fと秋瀬胡桃除けば、王直属の戦士は彼だけだ。 ひものは叫んだ。 「ここから先へは一歩も通さない!覚悟しろ!」 すると、兵士たちは剣をもってトカゲたちに近づき、またひものは大砲から特大の1発をお見舞いした。 「ディメンション・ゼロ!」 トカゲがそう言い終えた頃には、すでに決着はついていた。 兵士は皆重傷だ。もちろん、ひものもである。 「手加減したから、安心してね。」 二人は王室へと向かっていった。 「やはりお前か、いにしえ。まさかお前ごときにここまでやられるとは思ってもみなかったぞ。」 『闇』のDr.Fが静かに言った。落ち着きを取り戻している。 「覚悟しろ。今日が貴様の命日だ。あの時の恨みは忘れない。」 「ふむ、どうやら賢者様を味方につけているようだが、本当にお前に俺が殺せるかな? 賢者様も、どうしてこんな男についたのでしょうかね?」 「取引ってやつかな。まあ、この用件が終わったら自分の計画を進めるけどね。」 「取引ですか。では、いにしえと手を切った後は私と取引しませんかね?」 Dr.Fは試しに取引を持ちかけてみた。本来は、賢者は全員味方につけるつもりだった。 「それは無理だよ。だってこの用件が終わったら王様はいにしえに殺されちゃうじゃん。」 「これは参りましたね。ではあなたも殺す必要ができてしまいましたな。」 妙に落ち着いているDr.Fと、相変わらず子供のようで緊張感を感じさせないトカゲ。 いにしえは、緊張している自分が場違いなような気がした。それでも言った 「こいつは俺が倒すから、トカゲは手を出すなよ。」 「もちろん、そのつもりだよ。」 いにしえは頷くと、絵を描き始めた。 _________________________________________ とりあえず、ここで前半終了です。 後半は戦闘がメインです。 新しく紅桜と民勲を登場させました。 なんか、アヤルバムスばっかりキャラ増えるなぁ・・・人口から言えばその方が自然かもしれないけど。