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やまりっくたちは魔法のじゅうたんですでにアヤルバムス城の近くへきていた。 気温はいまだに高い、さっきまで雪山にいた神風はあまりもの温度差で気持ちが悪くなってきたほどだった。 しかしエレクトロのほうを見ているとまだ平気なほうだと感じてきた。 雪山にいた時に巻いていたマフラーはすでにとったようだがかなり熱そうだ。 仰向けに寝ていてさっき描いた氷の塊を頭に乗せている。 「あの…大丈夫ですか?」 汗を額から何度も拭いているエレクトロをみて神風が聞いてきた。 「アァ…暑さには慣れないものでナ…最近異常気象が続いているとは聞いていたがこれほどとはネ…」 「そう言っても国王の前ではそのポーズは許されないからな。」 後ろをチラっと見ながらやまりっくが言った。 「ン、クーラーさえあれば大丈夫だけド。」 そんなことを言って自分の言ったことに笑った。 ジョークのつもりだったんだろうがあれほどの出来事があった後ではあまり笑える気にはなれない。 やまりっくも森から出てからずっと無表情だ。 それに気づき、エレクトロは表情を少し曇らせた。 少し時間が立ってから城の門についていた。 城は全体的にアヤルバムス国を代表する青に染まっている。 門は常に開いている状態だが、最近の出来事で警備が固めてあるのか門番が5人いた。 「さぁ、行くぞ。王に状況を報告しないとな。」 門番に軽く挨拶をしながら二人に言った。 しかしエレクトロの前に二人の門番がいきなり武器を向けた。 「すいませんが城へはアヤルバムス国民以外自由に入れません。」 言葉使いは丁寧だったが明らかに敵意を持っていた。 「そいつは俺たちの連れだ、通してやれ。」 やまりっくが言ったが門番達はエレクトロから目をそらさない。 「王からの命令です。特別な許可がないと他国からの者は入れません。」 「緊急事態なんだ!通してやれ!」 「緊急事態だろうと許可が無ければ通れません。」 話をまったく聞いてもらえないようだ。 それが仕事なのだろうがやまりっくはそれに腹が立ってきた。 「そいつがいないと王に話が…!」 「ダイジョウブダイジョウブ。」 やまりっくが叫んでいるところをエレクトロが止めた。 「確か昔の住民票があるはずダカラ…」 そういってカバンをドサッ、と下ろして中をあさりはじめた。 「じゅ、住民票があったのか?」 びっくりしたようにやまりっくが聞く。 「ソレが無いといくら雪山なんて辺境に住んでいてモ違反になるからネ…ハイ、コレ。」 そういって門番に紙を渡した。 門番はその紙にすばやく目を通し、他の門番と何かを話し合い、 「よし、通ってよい。」 と紙をエレクトロに返しながら言った。 「ドーモ。」 エレクトロはボロ布のような帽子をあげてお礼をし、紙をカバンへしまった。 城の中もほとんどの物が青だった。 廊下に飾ってあるツボやネコの飾り物などは金銀や宝石から出来ていたが 屋根も床も柱も青が混じった色になっている。 少しでも明るく見せるためか完全な青ではなく、水色がおおかった。 3人が廊下をしばらく歩いていると他の扉よりも大分大きい扉の前にやまりっくが止まった。 「この先に王がいる。神風はすでに何回かあっているから大丈夫だが、 エレクトロ、ここは異世界とマナーがある程度違うから気をつけろよ。」 「オイオイ、いくら私デモマナーは知っているヨ。」 エレクトロはそう言ったが神風はあの店で話していたときの事を思い出し、 少し不安になったが何も言わなかった。 「そうか、それなら良いけどな。」 そう言いながらやまりっくは扉をゆっくり開けた。 扉の開けたすぐ後に目の前には階段があった。 長さはかなりあるらしい。 やまりっくと神風が階段を上り始めたとたん、鈍い音がしたから後ろを振り向くと エレクトロが階段に倒れたところだった。 「王の前では無かったから良かったものの…」 やまりっくがため息をついてカバンの重さで立ち上がるのに手間取っていたエレクトロに手をかした。 「スマンスマン、扉を開けていきなり階段だとは思わなかったからネ…」 「しっかりしてくださいよ…」 神風もため息混じりに言った。 しばらく沈黙が続いていた。 聞こえてくるのは階段を上る音だけだった。 いきなりその沈黙を破る声がしたので神風は少しびっくりした。 「しかしコノ階段はドコまで続いているんダ?ずいぶん上ったと思うケド…」 「もうすぐ着くと思うぞ…」 3人ともすでに疲れていた。階段は結構急で一段の差が高いものだからかなり疲れる。 「いつも気になっていたんだけどこの階段ってなんでこんなに長いの…?」 今度は神風が聞いてきた。 「王の部屋へ通じる道はこの階段だけでな、襲ってくるやつがいたら部屋に着く前になるべく疲れるためらしい… ちなみに絵も魔法も使えないようだ。」 「それはもう気づいたよ。」 やまりっくに少し怒ったように答えた。 城まで魔法の力で持っていた賢者の筆がいきなり持ち上がらなくなってしまい、 自分で持たないといけないことになってしまった。 雪山でも少し持ったがほとんど立っていられないほどの重さで それを持ちながら階段を上るのはよりいっそう辛い。 「よし…つい…た…」 最後の一踏ん張りのようにやまりっくが言う。 目の前には最後に通った扉に比べるとかなり小さい扉があった。人がちょうど通れるくらいの高さだ。 しかし何となく、前の扉に比べると豪華に見える。 飾りが多く見えるが階段を上りきった達成感もあるのかもしれない。 やまりっくは何回か深呼吸をし、そのドアの取っ手を取り、数回ドアにぶつけた。 しばらく待った後、中から「入って良い」と言う声が聞こえ、ドアを開けた。 かなり広い部屋の奥の椅子にさんたろう王が膝の上のネコを撫でながら座っていた。 王の両側には壊れた前の椅子とにんてんが立っていた。 「良くやってきてくれた。さぁ、こっちへ来てくれ。」 やまりっくが礼をし、国王の方へ歩こうとした時、また鈍い音がした。 同時にさんたろう国王の顔に笑みが浮かんだ。 嫌な感じを感じながら後ろを見てみるとエレクトロが今度は頭を入り口にぶつけていた。 「エレクトロ…」 がっかりしたような声でやまりっくに言われた。 「イテテ…もっと気をつけたほうがよかったカナ…低いナ、この扉…」 そんなことを言いながら部屋の中に入ろうとしたと同時に今度は段差にに引っかかり、またこけた。 やまりっくは片手を顔に当てて聞き取れない言葉をつぶやいてからエレクトロに手を貸した。 王のほうをまた見てみると神風もにんてんも笑いをこらえていた。 しかし国王は最初の笑みを浮かべたまま、こっちを見ている。 「行くぞ。」 エレクトロをまた立つのに手伝い、王のほうへ向かった。 「先ほどの無礼をお許しください。」 王の前に跪きながらやまりっくが言った。 「いや、大丈夫だ。それで?何か新しいことでも分かったか?」 さんたろうはさきほどの笑みを消し、目をしかめた。 「まず、先ほどのザリードの森からの光は賢者トカゲの復活によるものでした。」 その言葉を聴いて国王は喜んだようでがっかりしたような表情になった。 ため息をついた後、再びやまりっくへ顔を向け「続けてくれ。」と言った。 「トカゲには逃げられてしまいましたがどうやら今の狙いは賢者達の武器、そしてヴォルトハルバードのようです。 トカゲとの戦闘中の間に神風とこちらのエレクトロが助けに来て助かりました。そのときに賢者の筆、 トカゲはイノショウの筆だと言っていましたが、それを二人が持ってきたのです。今は神風が持っています。」 やまりっくが視線を神風に向けると神風はあわてて賢者の筆を前に出した。 「イノショウ…圧倒的な「力」を支配する賢者か…」 さんたろう王はその筆を見ながらつぶやいた。 「しかし君がやってくるとは思わなかったな。借金の事は…?」 今度はエレクトロのほうをさんたろうが見た。 「しゃ、借金!?」 やまりっくはいきなりびっくりしながら立ち上がった。 「借金ってどういう意味だ!?」 そういうとエレクトロをにらみつけた。 神風も何のことかとエレクトロを見る。 部屋の者全員に見られてエレクトロは少しひるんだがあわてて言い返した。 「ア、イヤ、アレは事故だったんダッテ!」 「事故ってどういうことだ!?」 「ソノ、マァ、私がココに来たのモ…事故だったんダ…」 やまりっくが落ち着いているのを確かめて話を続けた。 「私の故郷のイレリースはネ…普通に行ける所じゃないんダ…異世界と言ってネ…」 他の者に止められないか一人一人を見てまた続けた。 「やまりっくは時空の裂け目から現代へやってきたそうじゃないカ。」 その言葉にやまりっくも神風も驚いた。 「何故それを…!」 やまりっくが聞こうとしたところをさんたろうが止めた。 エレクトロはほっとし、また話し出した。 「やまりっく、お前の通ったのは「時」の方の裂け目ダ。だから古代の時代からココまで来れた。一方、私が 通ったのは「場」の裂け目ダ。だから場所から場所へ飛んでこれた…というよりもイレリース自体が 場の裂け目にある、と言ったほうが正確だろうカ。」 「どういう意味ですか?」 神風が聞いてきた。 「マァ、びっくりするのもしょうがない。イレリースは昔から時空の裂け目を漂っている大陸ダ。 何故それがおきたのかを調べるのが私の仕事でもアッタ。 絵師の力が残ったまま、と言うことは画伯が生きている時から 賢者に殺されてしまった前に起こったことだと思われル。」 「画伯」と言う言葉が出たとたん、場の空気が変わった。 特にさんたろう王がその言葉に反応したようだ。 「時空の裂け目の中にある大陸だから裂け目もかなり頻繁に起こル。その時を使ってコッチの世界との 商談をしたり、いろいろと情報収集したものダ。時間がたてばまた勝手に道がふさがるから 他の国からあまり知られずに情報を集められたものダ。 私もその情報を集める1人でアリ、偶然ココに来てしまったからには店を開いてたまに やって来る人からココで知られている絵師の事を聞いてイタ。」 「まるでスパイの本拠地のようだな。」 「オイオイ、人聞きの悪いことを言わないでクレ。」 やまりっくの言葉にエレクトロが答えた。 「マァ、そうとは言えるかもしれないがナ…デ、私がコッチにいるのはその頻繁に起こる時空の裂け目のせい。 何年も裂け目の中にいて大体の場所は予測できるイレリースでも100%、場所が予測できるわけじゃないんダ。 ソレが偶然にも私の目の前に現れてネ、吸い込まれた先がこのローロック大陸だったと言うわけサ。」 「それで借金はどうしたんだ?」 王と関係あることだからかやまりっくは我慢できずに聞いた。 「飛ばされた先が宝物庫ダッタ。デ、大切な物をかなり壊してしまってナ。」 思ったよりも小さなことでやまりっくはほっとしたようで呆れた。 「ずいぶんと運が悪かったのね…」 神風のその言葉を聞くとエレクトロはニヤリとして、 「運だけはまったく無いもんでネ。」と答えた。 「でもソノ賢者の筆が「売れたら」どうにかなるんですけどネェ。」 ニヤニヤしながら王のほうを見ているのに気づき、やまりっくはまた注意した。 しかしその言葉でさんたろう王は考え込んでいた。 「…よし、分かった。借金を無しにしよう。」 エレクトロの表情は一気に明るくなり、やまりっくはかなり驚いたようだった。 「ただし、今回の出来事には全面協力してもらうぞ。」 「ン、最初からそのつもりダ。絵師の力ももっと分かりそうだしナ。」 そういってエレクトロは立ち上がり、神風の前にあった賢者の筆を取り上げ、にんてんに無理やり持たせた。 「ハイ、宝物庫とやらに持っていってクレ。王自らじゃ置かないだろうシ、私たちはドコにあるか知らないんでネ。」 いきなり初めて会う人にそんなことを押し付けられてあまり嬉しそうには見えなかったが仕方なく右のドアへ向かっていった。 「王様、ヴォルトハルバードはどうするんですか? トカゲが狙っていると分かった以上は…」 そう言ってその武器を取り出そうとするが、その前にさんたろうが言った。 「いや、使い慣れている君に残しておいたほうが良いだろう。 ココの警備よりも君の実力のほうが守るためにはむいているのかもしれないしな。」 やまりっくはしばらく考えた後、 「分かりました、そうさせていただきます。」 と言い、頭を下げた。 「…む、また誰か来るな。」 さんたろうがそういうと確かにやまりっくたちがとおった階段があった部屋のほうから足音が聞こえる。 後が止んだと同時にドアを叩く音が聞こえた。 「入って良いぞ。」 王が許可を出すとドアが勢い良く開いた。 入ってきたのはゾーラ2とルイージの孫だった。 よほど急いで階段を上がってきたのか息があがりきっている。 「王様!大変なんです!」 ルイージの孫が大声で言いながらさんたろう国王へ走っていく。 それにゾーラ2もついて行った。 神風とやまりっくを通り過ぎると頭を下げたが 1人だけ知らない者がいて頭をかしげた。 不思議そうに見られているのに気づき、エレクトロはいつものように帽子を上げて挨拶し、 ゾーラ2もそれにあわせて少し戸惑いながら頭を下げた。 「今日はいろいろと起こる日だな。どうしたんだ?」 王にそう聞かれてルイージの孫はいきなり物凄い勢いで話し始めた。 「実はゾーラ2の双子の兄が生きていたんです!3年前の出来事で死んだと思われていたんですが 数日前にドクタースリーフの国王に何かが起こってそれで生き返ったとか意味の分からないことを言い残して すぐに消えてしまって…」 「ルイージの孫、落ち着いてくれ。そんなに一気に話されても何のことか分からない。」 さんたろうにそう言われてルイージの孫は 「あ、すいません…」 とあわてて頭を下げた。 「サテ、ココにいても話の邪魔になると思うのデ、私たちはココラで失礼します。ヒュヴァスティ。」 また帽子を片手で上げ、最後に良くわからない言葉を残してドアへ向かっていった。 やまりっくと神風もあわてて追いかけていき、最後に誰かが階段を転げ落ちるような音がした。 「良いんですか?やまりっくや神風ならまだ分かりますがあのような者に任せて。」 隣の部屋からにんてんが戻ってきて心配そうに王に小声で聞いた。 「確かに今のところ、エレクトロが誰の味方かは分からない。しかし少しくらいの助けにはなるだろう、 森で起こった事と今話していたことを考えるとウソは無いようだ…」 さんたろうもにんてんに小声で話した。 ゾーラ2とルイージの孫もなんて言っているのか聞き取ろうとしたが、 母国の王の盗み聞きは良くないと思い、話が終わるまで待つとした。 「賢者トカゲが復活したか…他の賢者が復活する時も遠くは無いな…」 「トカゲは賢者の中でも魔力が他に比べると桁違いに強かったそうです。 封印の解ける時期が賢者の力により、早まったりしたら次に復活するのは力を象徴するイノショウでは?」 「復活の後、筆を取り返しに来るのは当たり前か…宝物庫の警備を固めろ。」 「はい、わかりました。」 そう答えた後ににんてんはまたさっきのドアへ向かっていった。 「筆が無くても十分強いと言われていたが…本当だとしたら厄介だな…」 さんたろうはそう呟き、二人の客人が待っているのに気づき、 「さ、話を続けてくれ。」 と言った。 「まったく…アヤルバムス王の前であの態度とは…」 やまりっくが静かにつぶやいた。 3人はアヤルバムスの城下町にいた。 さすがにローロック大陸一活気のある国と言われるだけあってとにかく人が多い。 屋台なども沢山あり、混雑が続いた。 「まぁまぁ、イレリース大陸ではあれが普通なのかもしれないし…きっとこっちにまだ慣れてないのよ。」 城を出てからずっとこのような会話が続いていた。 エレクトロの王の前での勝手さがよほど頭にきたらしい。 「そういえばルイージの孫とゾーラ2が言っていた事も気になるね…死んだ人が生き返ったって…」 さっきの事を忘れようと神風が話題を変えた。 「リザレクションで賢者が復活して、復活と同時に不思議な力で生き返ったりしたんじゃないのか? リザレクションはいろいろな影響を及ぼすからな、ザリードの森の近くにいたのならなおさらだ。」 案外簡単に答えられて神風は驚いた。 そこで話題を続けようとまた話す。 「でもドクタースリーフの国王に何かが起こったから、って言っていたけど…」 「そこら辺の事は良くわからないな…スリーフの国王は最近何を考えているのかわからないし…」 「もうちょっと話を聞いていればよかったのに…」 「俺達とは関係のない話だ。邪魔にならないように、ってエレクトロが思ったのは正解だな…」 「へぇ…あれ?エレクトロさんがいないけど…」 やまりっくが後ろを振り向くとエレクトロの姿がすでに無かった。 「おいおい…何処に行ったんだよ…」 「…そういえば店のオーナーだったんだけど…商談でもしに行ったのかな…」 神風が思い出したように言う。 「この人込みの中から探せと言うのか…」 「大きなカバンを背負っているから簡単に見つかるわよ、背も高いし。」 想像しただけでがっかりしたやまりっくを神風がなだめた。 「とりあえず来た道を戻るか…」 そう言いながらまた城のほうへ歩いていった。 「そういえばこれからどうする?手がかりがかなり少ない状態だけど…」 「トカゲが行った先は大体見当がついている。姿を消したのに使った魔法は風の力をかなり使う。 それで街のど真中に飛んでいって風で気づかれるほどアイツは馬鹿じゃないし、 中立地帯の中心も人がかなりいる。俺たちからなるべく遠くへ行きたいと思っていたのなら アヤルバムスとスリーフの国境の近くだろう、あそこは人がとにかく少ない。」 「何でそんなにトカゲのことを知っているの?」 不意にそんなことを聞かれ、やまりっくは一瞬立ち止まった。 「トカゲに出くわした時もやまりっくのこと知っていたみたいだし…」 「悪いけど今はそのことは教えられない。時間がある時に話すから。」 いきなり歩くのが早くなって神風は何となく−そのことには触れて欲しくない−と言う思いを感じるような気がした。 そんなことを考えるとやまりっくがすでに遠くにいるのに気づき、走っていった。 「どこへ行ったのやら…」 人込みを避けながらやまりっくが独り言のように言う。 神風も必死に付いて行く。 「あ、あそこ!やまりっく!」 呼ばれていることに気づき、神風が指を指している方を見てみると確かにボロ布を頭に被った 人込みの中から飛び出た頭が見えた。 「エレクトロー!」 やまりっくがそう叫ぶとそれに気づき、エレクトロが向かってきた。 大量にかき氷を買ったようだ。 「オヤ、ドコにいたんダイ?探したヨ。」 「それはこっちのセリフだ…」 相変わらずのマイペースさでやまりっくは起こる気にもなれなかった。 そこに神風もやってきた。 「凄い数ね…」 「アァ、コレね。上手い物ダネ、かき氷。熱さも吹き飛ぶほどダ。」 「まったく、買いに行くんだったら言ってくれよ…」 やまりっくがまたため息をつく。すでにエレクトロと言う存在はやまりっくにとって頭痛の種になっているようだ。 「そういえばオミヤゲも買ってきたゾ。ハイ、神風。」 すぐ近くで買ったのにお土産と言えるのか、と思ったがもらうことにした。 中には明るめの茶色の宝石が入っていた。 「珍しい色だったからネ。やまりっくにもあるゾ。」 別に宝石に興味があるわけじゃないが断ることも出来ないので やまりっくももらうことにした。 水色だったが白に近い色でもある宝石だった。 見ていると何となくすっきりする。 「感情を落ち着かせる力があるんだとサ。 それにこの先絶対役に立つっテ。高かったヨ。」 「あ、あぁ、そうか…」 ジョークのつもりか何なのか知らないが 何も言わずにやまりっくはその宝石をポケットに入れた。 所変わってココはシクッスの山脈。 ドクタースリーフの国境に沿って続いていてローロック大陸一高い山、ユグレネ山がある。 「本当にこんなところにあるのか?」 ブレードが近くの石に腰を下ろして聞いた。 「もう4時間は探したんじゃないのか?」 「反応はここにあるはずなんだけどな…」 ローリーが頭をかしげる。 ルハ国王により、山脈であるものを探して来いと言われていたらしい。 「ハル!そっちはどうだ!?」 大声でそういうと誰かが二人のほうへ向かってきた。 「駄目です…反応はちゃんとあるんですけど見つかりません…」 暗い口調で言った成年がハルだった。 「そうか…じゃあしばらく休んでおこう。空気が薄くて長時間仕事は出来ないからな。」 そういうとローリーは上着のポケットから万年筆を取り出し、 地面すれすれに何かを描き始めた。 手を止めるとあっという間にいろんな料理が現れた。 「しかしリアル属性は良いよな、描いた物が本物になるんだから。」 現れた皿に手を伸ばしながらブレードが言った。 「コレで宝石なんか描けたら大もうけなのにな。」 「おいおい、それは違反だって知っているだろ。」 さっき描いた蕎麦をほおばりながらローリーが言った。 「料理を描くことだって本当は違反なんだからな。国王から許可をもらっているおかげで描けるんだ。」 その後、皆食べることに集中した。 空気の薄い山で4時間地面を掘り、ルハから頼まれている物を探していたから かなり疲れてしまったようだ。 「ペプ氏J−44も来れば良かったのにな…」 ブレードがボソッと言うとローリーがそれに答えた。 「仕方ないだろ。ぴかちゃうが送られてからずっと研究しているからな。」 「あれって国王への贈り物だろ?」 「国王もいろいろと気になるっているんだと思う。画伯のぴかちうに似ているって言うしな。」 二人がそんなことを話している間、ハルは自分の料理を少しずつ食べながら山の奥のほうをじっと見ていた。 何か分からないが妙に感じた。 動きが無いような、全てが止まっているような風景に見えた。 「…何かあるのかな…」 それに二人がすぐに反応した。 「ん?ハル、何か言ったか?」 「あ、いえ。なんとなく…山の奥のほうが騒がしい…いや、逆に静か過ぎるような気がして…」 「そうか?」 ブレードが山のほうを見てみたが何も感じないのか頭をかしげる。 「考えすぎだろ。今は休みだからしばらく『あれ』の事は忘れろ。」 ローリーがまた蕎麦をほおばって言う。 「…はい、そうしときます。」 ハルがまた二人のほうを向くとすぐ後ろで光の柱が凄い勢いで上がった。 「な、何だ!?」 ブレードがびっくりして跳ね上がる。 「賢者の復活!?早すぎる!!」 万年筆を取り出し、ローリーが言う。 「とりあえず行こう!賢者を野放しにするのは良い事じゃない!」 「と、言ってもココの賢者ってなんだったんだ!?」 ローリーを追いかけながらブレードが聞く。 しかしそれに答えたのはハルだった。 「圧倒的な「力」の支配者、賢者イノショウです! 肉体的な強さだけでなく、絵の破壊力も桁違いに強かったとされています!」 その時、柱へ向かっていったのはローリー達だけではなかった。 「光の柱!?」 やまりっくがさっきの音にすぐ反応してシクッスの方角を睨んだ。 「神風!エレクトロ!行くぞ!!」 「うん!」 神風はすぐ答えたがエレクトロはしばらく考え込んで「あぁ、そうか」と思ったかのようにやまりっくたちを 追い始めた。 「とりあえず人込みを抜けてからじゅうたんでシクッスへ向かおう!あれはユグレネ山の方角から来ている!」 また城の方角へ走りながらやまりっくが言った。 「賢者の復活と言うことはトカゲもそこに来ているかもしれないって事ね!」 神風が言った。 城下町の外れのほうへ出ると周りに人が見当たらなくなってきた。 そこでやまりっくがバッとじゅうたんを取り出す。 「さぁ、乗れ!」 トカゲが関わっているせいか気迫が凄かった。 二人がじゅうたんに乗ったと同時にやまりっくは凄い勢いでじゅうたんを上空に上げ、 急な動作に神風とエレクトロはじゅうたんに倒れてしまった。 「や、やまりっく。そんなに急がなくても間に合うッテ。かき氷を落としてシマウ…」 そういうとエレクトロはかき氷を落とさないようにそっと座り、また食べ始めた。 「戦いの邪魔になるから捨てとけって!」 やまりっくが言うがエレクトロは頭を大げさに横に振った。 「安くてもこれほどあったら結構金がかかるんだダッテ。勿体ナイ…」 何を言っても駄目だと思い、やまりっくは諦めた。 「だったら落とさないように気をつけろよ!」 やまりっくは体を屈めてさらにスピードを出した。 魔法のじゅうたんで飛んでいると思えないほどのスピードだった。 目が開けていられないほどに風が強く吹き音も大きい。 「間に合うといいんだけどな…」 やまりっくがそう言ったが風の音に声がかき消されて後ろの神風とエレクトロは気づかなかった。 ―――――――――――――――――――――――――― テスト時期にやるのはやはり無謀だったか…(YES 今まで出た人しか出していません、すいません。 新しく出すのは苦手です、見当違いな奴になってしまったら困るです(そうか にんてんさんごめんなさい_| ̄|○ あまり話していなくてごめんなさい。 今までと違っていたら怖いんですよ!(確かめろよ
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