風がやんで目を開けるとそこにはトカゲの姿はもう無かった。 「大丈夫?やまりっく。」 神風が心配そうに聞く。 「一回トカゲの攻撃が直撃したが、少し休めば大丈夫だ。 ところで、エレクトロ。イノショウの筆だが、アヤルバムスの城の宝物庫に保管してもらってこい。 あの宝物庫は、さんたろう王以外は入れないから安全だ。 いいか、トカゲが何を考えているかは知らないが、とにかくあいつにイノショウの筆が渡ったらまずい事がおきるのは確かだ。」 エレクトロはまじまじと筆を見た。 「そうだ、ナ。」 それを聞いたあと、やまりっくは魔法のじゅうたんを広げた。 「とりあえず、アヤルバムスに帰るか。」 3人が乗り込んだところで、アヤルバムスに向けて飛び出した。 トカゲはかなり遠くまで逃げてきた。どうやら、大陸の南側らしい。 既に辺りは真っ暗になっていた。 一休みしながら、プリズマティックセイバーを見つつ呟いた。 「やっぱ魔石がないと完全に力が戻らないよな〜。さっさと見つけちゃいたいな。」 そのとき、トカゲは後ろに気配を感じた。 振り向くと、一人の男が立っていた。目には憎しみが宿っていた。 警戒しつつ、話しかけた。 「ん?君だれ?」 すると男が返してきた。 「俺はいにしえ。お前は古代の賢者の一人、トカゲだな?」 「そうだけど、何か用?」 するといにしえは袋から何かを取り出した。 「お前が言っていた魔石というのはこれのことではないのか?」 確かに見覚えがあったその魔石は、赤く輝いていた。 「ああ!それそれ!どうやって手に入れたの?」 トカゲは子供のような声をあげた。 いにしえはキョトンとした。 「お前、本当に賢者か?」 「俺は基本的にこんな口調にだよ。さっきはライバルと戦っていたから真面目な口調になったけど。」 いにしえは、こいつ大丈夫か?と心の中で毒づいたが、話を進めた。 「どうやって手に入れたかはあとで話す。ところでこの魔石をただで貰えるなんて都合の良い事は考えてないだろうな?」 「まさか。何が望みなんだ?」 「俺には復讐したい奴がいる。だがそいつがとっても偉い人でね簡単には殺させてくれないんだ。 それで、さっき下見をしてきたが、やはり俺一人の力ではどうすることもできない。そこで・・・」 「俺に協力して欲しいの?」 「ああ。相手はドクタースリーフ国の王、Dr.Fだ。」 王と聞いて少しびっくりしたが、魔石のために要求を受け入れた。 「別に良いよ。ちょうど力を取り戻すこの剣を試したいところだったし。じゃあ、魔石は返してもらうね。」 「待ってくれ。実は俺は魔石が無くなると喋れなくなる。 もともと喋れなかったんだが、この魔石の力のおかげで持っている間は喋れるみたいなんだ。 先に俺がこの魔石をどうやって手に入れたかを話す。」 トカゲはさっさと魔石を返して欲しかったが、そっちの話も興味があったので、話を聞くことにした。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2週間前、ルイージの孫といにしえは遺跡にたどり着いた。 「この遺跡にどこにあるんだ?」 ルイージの孫が尋ねると、いにしえは書き出した。 『この遺跡には仕掛けがあってな。まあ、とりあえず中に入ろう。』 順調に最上階と思われるところまでやってきた。 「何もないじゃないか。」 ルイージの孫の言葉をあえて無視し、いにしえは壁に沿って歩いて何かを探していた。 そして、張り巡らされた壁の石の1つを押すと、何かが崩れる音がし始めた。 「これは・・・」 しばらくすると、階段が現れた。 『この仕掛けは下手したら賢者でも気づかないだろうな。どうやら、よほど大切な物が保管されているようだな。』 二人は階段を上っていった。 階段を上ると、狭い通路の先に宝箱が置いてあった。 ルイージの孫は、宝箱の重たい蓋をなんとか開けた。 「これは・・・?」 どうやら、何かの魔石だった。いにしえにも渡してみた。 「すごい魔力が秘められているな。トカゲの力の源になっているのかもしれない。 トカゲが暴れ回っているときになんとかこの魔石を奪い、この遺跡に隠した。ってところか。」 ルイージの孫は驚いた。喋れないはずのいにしえが喋っていた。 「お前喋れるのか!」 「ああ、どうやらこの魔石の魔力のおかげだな。書いて話すのも面倒くさいから、これは俺が持っていて良いか?」 「そうだな。取り扱いはお前に任せる。じゃあ、戻るか。」 入り口に戻ったところで、いにしえが筆を取り出した。 「どうした?喋れるんだろ?」 「今度書くのは、文字じゃないぜ!」 いにしえは絵を描いた。すると、ルイージの孫の体が徐々に薄くなっていく。 「いにしえ!俺をどうするつもりだ!」 「元から俺はお前を利用していただけだったんだよ。おかげで遺跡に来る間、餓死しないで済んだ。 せめてもの情けで、お前をアヤルバムスまで送ってやる。ありがたく思え。」 「いにしえ・・・」 ルイージの孫は泣き出したい気分だった。 「ちくしょう。俺は騙されていたのか・・・」 意識が遠のいていく中で、女っぽい声が聞こえた。 「ごめんな・・・さ・・い」 その声を聞いたのと同時に、気を失った。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「こんな感じかな。」 「そっか。確かに俺でもあんなところに隠されてたら見つけられないよな。見つけてくれてありがとうね。」 相変わらず賢者とは思えない口調で喋る。 「じゃあ、魔石を渡す。」 「これでいにしえは喋れなくなるんだね。」 「そうだな。まあ、別に言い残すことはない。」 いにしえが魔石を差し出すと、トカゲは魔石を受け取り、剣につけた。 「やっぱりプリズマティックセイバーにはこれがないとね。」 トカゲは少し興奮気味に言った。 そして改めて落ち着き、いにしえに言った。 「明日さっそく攻めるけど、それで良い?」 いにしえは頷いた。 「じゃあ、今日はもう寝よう。俺寝不足が嫌いなんだよね。」 トカゲがあくびをしながらそういうと、いにしえは筆を取った。 『一回お前の力を見せてくれないか?』 「良いよ。え〜と・・・あ、あの岩が良いかな?」 トカゲはかなり大きい岩を指した。 そして剣を持つと、岩に向かってジャンプし、ジャガイモでも切るかのようにあっさり岩を真っ二つに切ってしまった。 「やっぱり魔石があると威力が全然違うや。じゃあ、俺は寝るね。」 そういうと、トカゲはあっという間に寝てしまった。 いにしえはあっけにとられていたが、しばらくすると落ち着きを取り戻し、彼も寝た。 リザレクションの騒ぎなんてなかったかのような、静かな夜だった。 ……………………………………………………………………………………………………………………………… 【あと書きらしきもの】 なんかルイ孫といにしえの行動時間帯がややこしかったようです。 回想シーンとして二人のエピソードを入れたのは、いきなり2週間前に戻ると話が混乱するかもしれなかったからです。 ややこしいところは全部まとめたつもりなので、これから書く人はは結構自由に書けると思います。 いにしえさんがかなりおしゃべりになってしまいました。すいません(許さん) 魔石を持っていると話せると言う設定は、書いて喋るの大変そうだなぁと思ったからだけです(何それ) あと、何か同じような口調の人が多いと思ったので、トカゲの口調を子供っぽくしてみました(ぇ